◇SH3132◇金融庁・法務省・経産省、「継続会」に関するガイダンスを公表――継続会の開催に当たって留意すべき事項(2020/05/07)

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金融庁・法務省・経産省、「継続会」に関するガイダンスを公表

――継続会の開催に当たって留意すべき事項――

 

 「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」に係る金融庁・法務省・経済産業省は4月28日、「継続会(会社法317条)」に関するガイダンスを公表した。

 同協議会では、4月15日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表し、その中で、わが国の多くの企業が開催を予定している6月総会を念頭に、「継続会」の利用も視野に入れた運営上の留意点を公表していたところである(後掲の別稿参照)。

 しかし、「継続会」については、これまで開催された実例が必ずしも多くないことから、今般、本ガイダンスを公表して、継続会の開催に当たって留意すべき事項を示し、企業等の関係者の円滑な実務の遂行に資することとしたものである。金融庁等は、機関投資家(株主)に対しては、「企業が従業員等の健康や安全を最優先に考えた結果、継続会をはじめ例年とは異なる株主総会運営を行う場合には、形式的・機械的な基準によるのではなく、その実質・趣旨に着目した対応を行うことが強く期待される」としている。

 ガイダンスをみると、継続会の「趣旨」については、「未曾有の危機により、従業員や監査に従事する者を感染リスクにさらすことなく計算書類を確定することができない中にあって、剰余金の配当の基準日が3月末日とされている場合におけるその基準日株主に対する配慮、経営体制を刷新していく必要性等多様な利害関係者の利益や質の高い監査を確保するために、採用されるものである」とした上で、以下のように「各論」をまとめている。

 

第2 各論

1 継続会開催の決定

 当初の定時株主総会の時点で継続会の日時及び場所が確定できない場合、これらの事項について議長に一任する決議も許容される。

 この場合において、継続会の日時・場所が決まり次第、事前に株主に十分な周知を図る。

 

2 取締役及び監査役の選任

 そもそも取締役及び監査役の選解任は、株主総会の権限(会社法329条1項、339条1項)であることは言を俟たないところ、当初の定時株主総会における円滑な意思決定を確保するためには、確定した計算書類は提供されていないものの、既に公表した四半期報告等を活用して、この一年間の事業の概況、新任の経営者に求められる役割等について丁寧な説明を行うことが求められると考えられる。

 なお、任期が今期の定時株主総会の終結の時までとされている取締役及び監査役について、当初の定時株主総会の時点において改選する必要があるときは、当該時点をもってその効力を生ずる旨を明らかにすることが考えられる。

 

3 剰余金の配当

 当初の定時株主総会において剰余金の配当決議を行う場合、当該行為の効力発生日が2020年3月期の計算書類の確定前である限り、最終事業年度(会社法2条24号)である2019年3月期の確定した計算書類に基づいて算出された分配可能額の範囲内において行うことができる(同法461条)。

 この場合において、2020年3月期の計算書類の確定はなされていないものの、決算数値から予想される分配可能額にも配意することが有益であると考えられる。

 

4 合理的期間

 当初の定時株主総会と継続会の間の期間については、関係者の健康と安全に配慮しながら決算・監査の事務及び継続会の開催の準備をするために必要な期間の経過後に継続会を開催することが許容されると考えられ、許容される期間の範囲について画一的に解する必要は無い。もっとも、その間隔が余りに長期間となることは適切ではなく、現下の状況にかんがみ、3ヶ月を超えないことが一定の目安になるものと考えられる。

 

5 事務遂行の在り方

 本件に関する決算や監査業務の遂行は、当該業務に携わる者の安全と健康に十分に配慮しながら適切かつ合理的に遂行していくことが求められるところ、決算や監査実務の遂行に当たって書面への押印を求めるなどの慣行は見直されるべきである。

 

 

  1. 金融庁、法務省、経産省、継続会(会社法317条)について(4月28日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2020/05/11-2.pdf
     
  2. 参考
    SH3124 金融庁等、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表――「継続会」の利用も見据えた定時株主総会の運営等に関する留意事項(2020/04/28)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=11649277

 

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