経産省、20代から30代の産学官の若手による議論を取りまとめた報告書「企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 武 藤 雄 木
1 報告書「企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台」の位置付け
経済産業省は、2019年10月より、20代から30代のイノベーションにかかわる産学官の若手が集う「官民若手イノベーション論ELPIS[1](エルピス)」[2]を開催し、①若手が描く2050年の未来、②未来に向けた価値観、③価値観を反映した政策・ビジネス案をテーマに計5回のディスカッションを実施した。経済産業省から本年4月22日に公表された報告書「企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台」(以下「本報告書」という。)は、これらのディスカッションにおける議論の取りまとめてとしての提言であり、「ベテランと若手の双方が共創することの重要性」や「未来を形づくる大きな価値変化」などについて記載されている。今後、官民若手イノベーション論ELPISは、同月に経済産業省の審議会(研究開発・イノベーション小委員会)の下に設置された「若手ワーキンググループ」と連携し、オープンイノベーションへの取組みとして政策やビジネスに繋げていく活動を行うこととなっており、本報告書は、経済産業省が推し進める研究開発・イノベーションの支援・促進に向けた施策に一定の影響力を有するものと考えられる。
2 本報告書の概要
⑴ 本報告書が提言する5つの価値変化
本報告書は、2050年の未来像をディスカッションする中で、個人・事業・社会に未来に向けた5つの価値変化が起きていることが見えてきたと述べ、それぞれについて変化する価値観の詳細と変化前後の価値観を組み合わせることによって生まれる事例を紹介している。以下では本報告書が提言するこれらの価値変化について概説する。
【5つの価値変化】
(本報告書8頁より抜粋)
⑵ コミュニティのあり方:フォルダ型からハッシュタグ型へ
本報告書は、従来は、「株式会社XX YY部ZZ課の〇〇」といったフォルダの階層のように自分のポジションが決まっていたが、これからは自分の想いやスキルに基づき、SNSのハッシュタグ(#)のように組織を超えて様々なプロジェクトに参加することが主流となり、組織ではなく個人が社会を動かす時代になると提言する。そして、大企業の代表が業界・社会のニーズを把握し、政策も組織同士のコミュニケーションで形成されていた時代から個人やその集合体であるコミュニティをベースにした政策が機能していく社会になっていくと述べる。
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