SH3261 最高裁、ツイッターにおけるリツイートが一定の場合に著作権法上の氏名表示権を侵害する旨の判決 佐藤修二(2020/08/06)

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最高裁、ツイッターにおけるリツイートが一定の場合に著作権法上の氏名表示権を侵害する旨の判決

岩田合同法律事務所

弁護士 佐 藤 修 二

 

 最高裁は、このほど、ツイッターにおけるリツイートが一定の場合に著作権法上の氏名表示権を侵害する旨の判決を下した(最判令和2年7月21日裁判所ウェブサイト掲載。以下「本判決」という。)。本件は、直接的にはリツイートにより著作権を侵害されたと主張する著作者が米国ツイッター社に対してリツイートを行った者の情報を開示するよう請求する発信者情報開示請求事件であるが、ここでは、世の注目を集めた著作権法上の論点に焦点を当てて判決の概要を紹介し、若干の検討を試みる。

 事案の概要は、以下のとおりである。

  1. ① 被上告人である写真家は、自己の撮影した写真の隅に「©」マーク及び自己の氏名をアルファベット表記した文字等を付加した画像を自己のウェブサイトに掲載していた。
  2. ② その後、被上告人に無断で、①の画像を複製した画像の掲載を含むツイートが投稿された。
  3. ③ さらに、②とは別の複数アカウントにおいて、上記②のツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する、ツイッター上の再投稿)がされた。リツイートされた画面に表示された画像では、①の画像の上部及び下部がトリミング(一部切除)されていたため、①の画像にあった氏名表示部分が表示されなくなっていた。
  4. ④ 被上告人は、ツイッターを運営する米国法人である上告人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、③の各リツイートに係る発信者情報の開示を求めた。

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 最高裁は、③の各リツイートを行った者らによる氏名表示権(著作権法19条1項)の侵害を認める原審(知財高裁)の判断を是認した。上告人は、氏名表示権侵害の点について、③のリツイート記事中に表示された画像をクリックすれば氏名表示部分がある画像を見ることができるということをもって、リツイートを行った者が著作者名を表示したことになる旨の主張をしたが、③の画面自体に氏名表示が無い以上、著作者名が表示されたことにはならないとして、かかる主張は排斥された。

 本判決には、林景一裁判官の反対意見が付されている。同反対意見は、多数意見や原審の判断に従えば、ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め、あらゆるツイート画像について、これをリツイートしようとする者は、その出所や著作者の同意等について逐一調査、確認しなければならないことになり、ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであり、権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない、との懸念を表明している。

 この点、本判決は、リツイートにより表示された画像では被上告人である写真家の氏名がトリミングにより表示されないこととなっていたという本件の事実関係の下ではリツイートについて氏名表示権の侵害が認められるとしたものであり、判決の射程範囲は一定程度、限定されているようには思われる。

 しかし、上記のように本判決の射程は限定されるとしても、ツイッターは、法律の専門家ではない多くの人々が利用するものであり、本判決が「リツイートが氏名表示権を侵害すると認めた」等の形で過度に一般化されて受け止められる可能性は否めず、結果として表現行為を萎縮させることになるとも思われる。その点で、林景一裁判官の反対意見に共感できる部分も多い。

 悩ましい問題であるが、政策論として、ネット上の知的財産権の保護と表現の自由のバランスをとる議論を進展させていくことが望まれよう。

 

<本判決における多数意見と個別意見の概要>
多数意見 戸倉三郎裁判官補足意見 林景一裁判官反対意見

本件の事実関係の下では、リツイートを行った者は氏名表示権を侵害

多数意見に賛成
本判決によっても常にリツイートが氏名表示権を侵害するものではない旨を指摘

多数意見に反対
リツイートの萎縮を招くなどの弊害を懸念

 

以 上

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(さとう・しゅうじ)

岩田合同法律事務所弁護士。2000年弁護士登録。1997年東京大学法学部、2005年ハーバード・ロースクール(LL.M., Tax Concentration)各卒業。2005年Davis Polk & Wardwell LLP (NY)勤務。2011年~2014年東京国税不服審判所国税審判官。中里実他編著『国際租税訴訟の最前線』(共著、有斐閣、2010)等税務に関する著作多数。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

 

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