◇SH3310◇中企庁、後継者不在の中小企業を対象とする「中小M&Aハンドブック」を策定――「中小M&Aガイドライン」第1章の入門編の位置付けで事例解説にはマンガを採用 (2020/09/16)

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中企庁、後継者不在の中小企業を対象とする「中小M&Aハンドブック」を策定

――「中小M&Aガイドライン」第1章の入門編の位置付けで事例解説にはマンガを採用―

 

 中小企業庁は9月4日、「中小M&Aハンドブック」を策定したとし、経済産業省ウェブサイト上で公表した。

 中小企業を対象とするM&A(中小M&A)について、主に後継者不在の中小企業の経営者を対象として解説するもので、事業承継の選択肢の1つとして活用されるようになってきた中小M&Aのポイントを事例、手続の全体的な流れとして紹介するとともに、具体的な相談先も把握できるようにした。中小企業庁ではこれまでにもその施策を横断的または目的別に取りまとめた冊子やリーフレット、マンガやQ&A形式を用いて解説する冊子を刊行してきたところであるが、今般の「中小M&Aハンドブック」では表紙を含む全24ページのうちの10ページをマンガで構成し「事例漫画」と銘打って計5編を掲載したほか、フローチャートやチェックリストなどもフルカラーで収載。関連ホームページのURLについてはQRコードを目立つように掲げたうえで、英数字で表されるURLを添える扱いとしている。

 中小企業庁によると、中小M&Aに関する手引き・指針として本年3月31日に策定した中小M&Aガイドライン(旧・事業引継ぎガイドライン)中の第1章「後継者不在の中小企業向けの手引き」に対応したものとしており(本ガイドライン策定時の解説として、SH3099 経産省、中小企業におけるM&Aの更なる促進のための「中小M&Aガイドライン」を策定 三浦貴史(2020/04/10)参照)、ガイドラインの内容をより分かりやすく解説した。今般のハンドブックを読み、さらに詳しい内容を知りたい場合にガイドラインを読むことで理解を深めるという活用方法が推奨されている。なお、公表後の9月11日、関係先の一部住所などを修正したという。

 中小M&Aハンドブックは、全体を(1)中小企業でもM&Aが可能です、(2)M&Aには早期判断が重要、(3)M&Aの流れについて、(4)M&A専門業者について、(5)M&Aプラットフォームについて、(6)相談窓口――の6章で構成。上記1では、中小M&Aが売り手側にとって「後ろめたい」ものではないことを説きつつ、むしろ従業員や取引先のためにもなること、売り手が気付いていない事業の魅力を買い手が評価するケースがあることといったメリットを紹介したうえで、事例漫画①および②として「小規模企業において成立した事例」「債務超過であるにもかかわらず成立した事例」の2編を掲載している。

 事例漫画①では、売り手側を(ア)計測機器の製造会社(業歴40年)、(イ)売上高3,000万円、(ウ)従業員3名、一方の買い手側を(ア)計測機器の施工・メンテナンス会社、(イ)売上高5億円と設定した。売り手側の計測機器製造会社にあっては、先代の社長が亡くなって以降の10年間を引き継ぎ、現在は75歳になった経営者が登場する。廃業を視野に入れつつも地元信用金庫の担当者に相談すると、事業引継ぎ支援センターの無料相談を知らされ、当初は「M&Aなんて」と尻込みしていた経営者に朗報がもたらされるストーリー。製品に必要となる熟練の技術が4社にも及ぶ候補先の紹介につながり、従業員の継続雇用も叶ったという本事例のポイントは「躊躇せず早めの相談で、候補となる譲渡先が多く出る可能性もUP」と総括されている。

 上記4・5では、中小企業の経営者にとって通例はなじみのない専門業者やM&Aプラットフォームについて、それぞれの「手数料」に踏み込んで案内するようにした(M&Aプラットフォームの場合「売り手には一切の手数料が発生しないケースが多い」とされる)。専門業者については「マッチングなどをM&A専門業者に依頼する際の留意点」をチェックリスト方式で、また、上記6「相談窓口」では全国の事業引継ぎ支援センターの連絡先を一覧形式で掲載するなど、実践的な資料を併せて収載することで活用しやすい建付けとしている。

 

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