◇SH1495◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(25)―労働組合の役割 岩倉秀雄(2017/11/14)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(25)

―労働組合の役割―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、コンプライアンス部門と内部監査部門の連携と統制環境を形成する経営者の役割の重要性について述べた。

 特に、あらゆる面で混乱しがちな合併組織設立の初期においては、親会社だけではなく子会社に対しても、共同のコンプライアンス監査がリスクの早期発見・対応に有益である。

 実際に内部統制を有効に機能させるためには、体制整備だけではなく、経営者の自覚と責任ある行動により組織内にメッセージを発信し、統制環境を整備することが重要になる。

 今回は、労働組合の役割について考察する。

 

【労働組合の役割】

 合併組織における労働組合の役割は重要である。合併組織の労働組合は、組合員が旧組織の別々の文化を持った人々の集まりである点で、合併組織の縮図になっており合併組織と同じく出身組織による文化の衝突問題を抱えている。

 そのため、意見の調整が難しいが、合併組織の抱える課題を労働者の立場から経営層に示し、経営側と対等の立場で交渉し解決を図ることができる。したがって、合併組織の労働組合が真剣にコンフリクト顕在化の抑制に取り組めば、相当なパワー(影響力)を発揮することができる。

 合併組織の労働組合は、特に合併初期には、出身組織の組織文化の違いを超えて結集しやすい賃金等の経済面の交渉に集中しがちである。

 しかし、これまで考察してきたように、合併組織ではコンプライアンス違反が発生しやすく、そのために組織の社会的信用が失われ、場合によっては組合員が職を失う可能性もあることから、労働組合は経営者と共にコンプライアンスの浸透・定着に重点的に取り組む必要がある。

 コンプライアンス経営やCSR経営のように、組織のリスク管理や企業価値向上の取組みは、経営者と同じ船に乗っている従業員(その代表の労働組合)と経営者の利害が一致するので、労使は協力して取り組むことができるはずである。

 筆者は、ある組織の労働組合委員長の時に経営側の間違った合理化提案を激しい運動の末に撤回させたが、何代か後の組合執行部が経営側の言いなりになり、そのために発生した事態が、不祥事発覚の引き金となったケースを経験した。

 その不祥事は、組織全体を存続の危機に陥れ、(その時点で筆者は管理職になっていたが)筆者は、危機対応と経営再建に忙殺され、多くの人間が生活に影響を受けた。

 このときの経験から、筆者は、組合の役割の重要性を再認識した。

 組合は賃上げにのみ注力するのではなく、経営に対するチェック機能を働かせ、職場モラールの向上、ハラスメントの防止、違法な残業の撲滅等の非経済的な活動にも積極的に取り組み、健全な職場環境の形成を推進するべきである。

 その場合、現場の企業毎の組合だけではなく連合等の上部団体が、(労働安全衛生の取組みのように)コンプライアンス経営、リスク管理、CSR経営等にも会員組合が積極的に取り組むように支援し働きかけるべきである。労使一体となったそれらの取組みが、職場環境の改善、リスク管理、経営効率の向上、新たな戦略の形成・実行に寄与し、組織の持続的発展(=永続性のある雇用確保)につながると思われる。

 また、(既に実施している組合もあるが)労働組合が、組合員相談窓口を開設・運用することも有効であると思われる。その仕組みを効果的に運用できれば、組合に対する信頼感が高まり組織率向上につながる。運営のポイントは、組合が経営側と交渉し相談者が納得できる解決ができる場合であり、仕組みを作っただけで機能を果たせなければ、組合員の信頼を失い逆効果に成る可能性もある。

 いずれにしても、コンプライアンス経営やCSR経営は経営者の専権事項ではなく、ステークホルダーダイアローグを重視して組織の持続的発展を目指すのがCSR経営であれば、現場の実態を熟知し実際に業務を行なっている重要なステークホルダーである労働組合がその推進に協力するべきであり、そうでなければ、経営者がいくら旗を振っても本物にならない。

 しかし、日本経団連等の経営側の積極的で組織的な取組みに比べて、コンプライアンス経営・CSR経営に対する組合側の取組みが遅れているように思われる。

 労働側は、コンプライアンス経営・CSR経営に対するスタンスを確認し、組織的に取組みを再構築するべきである。

 

 今回は、筆者の労働組合委員長の経験を踏まえ、合併組織の労働組合の役割、コンプライアンス経営・CSR経営の推進に労働組合が積極的に関与する必要性、取組の強化について考察した。

 次回は、合併組織に対する親会社のガバナンスの発揮について考察する。

 

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