◇SH3346◇会社法施行規則改正案に関し、各業界団体が意見書を公表 堀 優夏(2020/10/16)

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会社法施行規則改正案に関し、各業界団体が意見書を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 堀   優 夏

 

1 会社法施行規則改正案に関するパブリックコメント

 「会社法の一部を改正する法律」(令和元年12月4日に成立、同月11日公布。以下、同法律による改正後の会社法を「改正会社法」という。)を踏まえた会社法施行規則等の関係省令の改正につき、令和2年9月1日、会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案(以下「本改正案」という。)が、法務省より公表され、意見募集手続(パブリックコメント)が行われた。

 本改正案に関し、日本弁護士連合会(日弁連)日本経済団体連合会(経団連)日本監査役協会等の各業界団体は、令和2年9月30日、意見書を各ウェブページ上で公開した。

 本稿では、本改正案のうち、会社法施行規則改正案に関する概要を取り上げるとともに、各業界団体の意見書で言及された内容を一部紹介する。

 

2 会社法施行規則改正案の概要

 改正会社法では、株主総会資料の電子提供制度の創設、株主提案権の濫用的行使制限や取締役報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備、社外取締役の設置義務化等の改正がなされた。

 これを受けた会社法施行規則改正案では、改正会社法において新設された株主総会資料電子提供制度及び株式交付制度等に関する細則が設けられたほか、取締役等の規律の見直しを受けて、役員等の報酬に関する事項並びに役員等賠償責任保険契約及び補償契約に関する事項等について、事業報告における開示事項が拡充されている。概要を示すと、次の表のとおりである(なお、以下単に「規則」というものは会社法施行規則改正案における規定を指し、現在の規則については「旧規則」という。)。

区分 規則の概要 関連条文
株主総会資料の電子提供制度 電子提供措置をとる方法 規則95の2
取締役等の報酬 取締役等の報酬等として交付される株式及び新株予約権に関する決議等の具体的内容 規則98条の2~98条の4等
取締役の個人別の報酬等についての決定に関する方針の具体的内容 規則98条の5
事業報告における開示事項の拡充 規則121条4号イ、ロ、5号の2~6号の3
役員等賠償責任 役員等賠償保険契約からの除外 規則115条の2
役員等の選任議案への記載事項 規則74条1項5号、6号等
事業報告の内容 119条2号の2等
社外取締役設置の義務化 社外取締役を置くことが相当でない理由に関する規定の削除 旧規則74条の2削除
定義規定の改正 規則2条3項5号ロ等
事業報告の内容 旧規則124条2、3項削除、規則124条4号ホ
社債に関する規律の導入 社債管理補助者 規則162条5~7号等
社債権者集会の決議省略 規則177条4項等
株式交付制度 株式交付子会社 規則4条の2
株式交付 株式譲渡の申込み 規則179条の2、3
事前・事後開示事項 規則213条の2、9等
株式交付計画の承認議案 規則91条の2
その他 規則23条4号等
その他 全部取得条項付種類株式及び株式の併合における事前開示事項 規則33の2第2項4号等
役員等の選任議案の記載事項拡充 規則74条の3第3項3号等(親会社等の関係)、 74条4項3号等(社外取締役に期待される役割)
事業報告の内容 規則120条1項7号

 

3 各業界団体による意見書の内容

 本改正案に関しては、日弁連、経団連、日本監査役協会のほか、日本司法書士会連合会日本取締役協会及び信託協会等が意見書を公開している。中でも経団連からは、法制審議会会社法制部会での議論を踏まえた規則改正を行うべきであり、同部会で議論されていなかった事項や議論結果と異なる事項が規定されている箇所が多数見受けられるとして、複数の条項につき全部ないし一部を削除すべきとの意見も表明されている。以下では、複数の業界団体から言及のあった取締役等の報酬に関する事業報告の記載についての意見を紹介する。

⑴ 規則121条4号イ

 規則121条4号イは、取締役等の報酬に関する記載につき、事業報告において取締役等の報酬等の全部又は一部について総額を掲げることとする場合には、業績連動報酬等や非金銭報酬等など、報酬の種類ごとに総額を記載する旨を新たに定めている。日弁連からは、株主への情報開示の観点から、更に社外取締役とその他の取締役に分けて、各報酬等の総額等が開示されるよう改正にすべきと提言されている(日弁連「会社法施行規則改正案に対する意見書」4頁[1])。

⑵ 規則121条5号ロ、ハ

 規則121条5号は、事業報告における取締役等の業務連動報酬に関する記載事項につき、「業績連動報酬等の額又は数の算定方法」(同号ロ)及び「業績連動報酬等の額又は数の算定に用いたイの業績指標の数値」(同号ハ)と規定している。他方、企業内容等開示府令では、上記に相当する箇所について、「当該業績連動報酬に係る指標の『目標及び実績』」とのみ定められている。日本取締役協会の意見書では、会社法上の事業報告記載事項が有価証券報告書の記載事項を大きく超えるものとなっており、事業報告と有価証券報告書の一体的開示に著しく反する(日本取締役協会「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見」4頁[2])との指摘がなされている(なお、経団連からも同号ロにつき、「算定方法の概要」とすべきである等の意見が出されている。[3])。

 

4 終わりに

 本改正案は、改正会社法の施行日(本稿執筆時点では、令和3年3月1日予定)から施行することが予定されている(ただし、一部規定については経過措置が取られている。)。会社法施行規則改正案については、上記で紹介したもののほかにも各業界団体より様々な意見が寄せられている。これらの意見を踏まえて本改正案がどのように取りまとめられるのかが注目される。

以上

 

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