◇SH3389◇金融庁、新型コロナウイルス感染症・ESGの開示例を「記述情報の開示の好事例集2020」として取りまとめ――新型コロナ関係15事例・ESG関係12事例、DXへの取組みを積極開示する例も (2020/11/18)

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金融庁、新型コロナウイルス感染症・ESGの開示例を
「記述情報の開示の好事例集2020」として取りまとめ

――新型コロナ関係15事例・ESG関係12事例、DXへの取組みを積極開示する例も――

 

 金融庁は11月6日、「新型コロナウイルス感染症」「ESG」に関する開示例を新たに取りまとめた「記述情報の開示の好事例集2020」を公表した。

 金融庁では2019年3月19日、2018年6月28日公表の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」における提言を踏まえた「記述情報の開示に関する原則」を策定・公表している。ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促し、開示の充実を図ることを目的としたものであり、本「原則」の公表とともに公開したのが「記述情報の開示の好事例集」(2018年度版)であった(SH2430 金融庁、「記述情報の開示に関する原則」及び「記述情報の開示の好事例集」を公表 森 駿介(2019/03/27)参照)。好事例集では「原則」中の各論における項目と対応するように「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」「MD&Aに共通する事項」「キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容等」「重要な会計上の見積り」の各開示例を取りまとめて紹介した。

 好事例集はその後「監査の状況」および「役員の報酬等」の開示例を取り込んで2019年12月20日付で更新され(2019年度版)、今般の公表では(A)新型コロナウイルス感染症に関する開示例、(B)ESGに関する開示例のみを「記述情報の開示の好事例集2020」(以下「好事例集2020」という)として取りまとめている。

 (A)新型コロナウイルス感染症に関しては今年5月29日、作成・提出される有価証券報告書の記述情報における「投資家等が期待する好開示のポイント」がQ&Aとして公表された。不確実な経営環境下、経営者の視点による充実した開示を強く期待してのことであった(SH3190 金融庁、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A-投資家が期待する好開示のポイント-」を公表――ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けて(2020/06/10)既報)。

 Q&Aでは「Q1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の記載内容」「Q2 事業等のリスクの記載内容」「Q3 事業等のリスクの対応策の記載内容」「Q4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)の記載内容」「Q5 キャッシュ・フロー分析の記載内容」「Q6 会計上の見積りの記載内容」「Q7 監査役等の活動状況の記載内容」「Q8 役員報酬の記載内容」「Q9 政策保有株式の記載内容」「Q10 将来情報における事後的な事象の変化に係る開示の考え方」の各設問について記載の要否や追加説明の要否などを説明しつつ、これらに対する回答・考え方を解説。一方、今般の「好事例集2020」では従前の好事例集の体裁を踏襲し、2020年3月期の有価証券報告書などから開示例を転載するかたちで掲載したうえで「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(経営戦略等)」については4社、「事業等のリスク」は2社、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」は2社、「経理の状況(追加情報)」は3社、また「四半期報告書」について2社、「決算説明資料」について2社を紹介し、各開示例における記載上のポイントや工夫を開示例ごとに簡潔に解説した。

 なお、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(経営戦略等)」を紹介したヤマトホールディングスについては「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に関する開示もある好事例として掲載。同社の具体的な記載をみると、新たな経営方針を掲げる「3つの事業構造改革」において「i. 『宅急便』のデジタルトランスフォーメーション」「ii. ECエコシステムの確立」を挙げたうえ、たとえば、上記 i に関しては「デジタル化とロボティクスの導入」「徹底したデータ分析とAIの活用」「従来の仕分けプロセスを革新する独自のソーティング・システムの導入」といった具体的な施策に言及、併せて期待される効果を明らかにするようにしている。

 また「経理の状況(追加情報)」に係る3社をみると、(1)「会計上の見積りの前提となる新型コロナウイルス感染症の収束時期」について(ア)そのシナリオや収束後に想定する需要の回復の程度について具体的に記載する(AOKIホールディングス)、(イ)事業の特性を踏まえ記載する(大和ハウス工業)、(ウ)収束時期のシナリオを記載する(丸井グループ)とともに、(2)各セグメントの翌連結会計年度の売上高もしくは利益に与える影響を定量的に記載する(AOKIホールディングス、丸井グループ)、または各セグメントの事業活動に対する新型コロナウイルス感染症の影響について具体例を挙げて記載する(大和ハウス工業)といった開示が好事例として紹介されている。

 上記(B)ESGについては、開示の細目を「SDGsと事業との関連性に関する開示」「ダイバーシティの推進に関する開示」「気候変動に関する開示」「人材育成・人材投資に関する開示」「経営者メッセージに関する開示」などと分類し、好事例として紹介する12社の開示中、どの開示を好ましい開示として注目したのかについて明らかにするようにした。

 ESGに関する好事例においてもDXに関する開示例が旭化成の有価証券報告書においてみられる。ここでは事業基盤の強化として「デジタルトランスフォーメーション推進による事業高度化」を掲げ「ITインフラ基盤(データプラットフォーム、ツール、人財育成)の強化」に取り組むと宣言したうえで、具体的施策として「知財情報による事業戦略構築、マテリアルズ・インフォマティクスによる開発手法の革新、AIによる製品の画像自動検査、設備診断技術の高度化等に注力してい」くとした。加えて「従業員が活躍できる基盤づくり」の施策例・施策内容についても具体的に記載している。

 

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