内閣府、「民事裁判IT化に関する世論調査」の結果を公表
――現在の民事裁判の申立方法の認知度等について――
内閣府は12月18日、令和2年度世論調査の附帯調査として、「民事裁判IT化に関する世論調査」の結果を公表した。
民事裁判IT化については、法制審議会の「民事訴訟法(IT化関係)部会」において具体的な検討が進められており、今年2月を目途に中間試案の取りまとめがなされる予定である(後掲の別稿参照)。
今般の調査は、全国18歳以上の日本国籍を有する者3,000人を調査対象として、9月17日~11月1日に郵送法で行われたもので、有効回収数は1,967人(回収率65.6%)であった。
以下、調査結果の概要を紹介する。
「民事裁判IT化に関する世論調査」の概要
1 現在の民事裁判の申立方法の認知度について
(1) 現在の申立方法の認知度
問1 あなたは、現在、民事裁判を起こす際に必要となる訴状などの裁判所への提出は、持参や郵送する方法のみが認められていて、インターネットを利用する方法は認められていないことを知っていましたか。
- ・ 知っていた 11.7%
- ・ 知らなかった 87.1%
2 民事裁判の申立方法のIT化について
(1) 申立方法をインターネットを利用する方法のみとすることの賛否
問2 あなたは、仮に今後、訴状などの裁判所への提出はインターネットを利用する方法に限定し持参や郵送による方法を認めないこととした場合、賛成ですか。それとも反対ですか。
○賛成(小計) 22.4%
- ・ 賛成である 9.1%
- ・ どちらかというと賛成である 13.3%
- ・ 弁護士などの専門家が提出する場合のみ、インターネット利用する方法に限定するのであれば賛成である 22.0%
○反対(小計) 51.7%
- ・ どちらかというと反対である 30.6%
- ・ 反対である 21.1%
(2) 賛成の理由
(問2で「賛成である」、「どちらかというと賛成である」と答えた方(441人)に)
問3 インターネットを利用する方法のみとすることについて、賛成の理由は何ですか。《重複回答》
(上位3項目)
- ・ 手続を行うために、裁判所や郵便局に行く手間や費用が必要なくなるから 84.4%
- ・ 持参するための時間や郵送に要する期間が不要になり、訴状などの受付までが迅速に進むことが期待できるから 64.2%
- ・ 裁判所の事務の効率化によって手続が迅速に進むことが期待できるから 46.9%
(3) 反対の理由
(問2で「どちらかというと反対である」、「反対である」と答えた方(1,017人)に)
問4 インターネットを利用する方法のみとすることについて、反対の理由は何ですか。《重複回答》
(上位5項目)
- ・ 誰もがインターネットを利用できるとは限らないから 82.4%
- ・ システムの情報セキュリティ水準が低いと個人情報が流出するおそれがあるから 48.0%
- ・ システムの操作に不安があるから 35.3%
- ・ 仮に、システムを利用できる機器がパソコンのみとなった場合、パソコンを所有していないから 23.3%
- ・ 自宅などにインターネットを利用するための回線がないから 21.2%
(4) インターネットを利用する方法のみとするための条件整備
(問2で「どちらかというと反対である」、「反対である」と答えた方(1,017人)に)
問5 インターネットを利用する方法のみとするためには、どのような条件を整備する必要があると思いますか。《重複回答》
(上位4項目)
- ・ 誰もが簡単に操作できるシステムを作ること 36.6%
- ・ インターネットの利用を制限されている人には、持参や郵送することを認めること 33.6%
- ・ システムの情報セキュリティ水準を高くすること 31.7%
- ・ 公的機関や弁護士などの専門家の団体などから、システムの利用について適切なサポートを受けられるようにすること 28.6%
- ・ どのような条件が整備されたとしても、インターネットを利用する方法のみとするのはよいとは思わない 37.0%
内閣府、「民事裁判IT化に関する世論調査」の概要(令和2年9月調査)(12月18日)
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2021/01/r02-minjisaiban_it.pdf
参考
SH3407 法務省、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第5回会議(2020年11月6日開催) 日下部真治(2020/12/01)