バーチャル株主総会に関する定款変更
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 生 方 紀 裕
弁護士 小 玉 留 衣
1 はじめに
2021年2月5日、上場会社が、物理的な総会会場を用意せず、すべての株主がオンラインのみで出席する、いわゆる「バーチャルオンリー株主総会」を開催可能にする旨を盛り込んだ産業競争力強化法(以下「産競法」という。)の一部改正法案が閣議決定され、第204回通常国会で審議されることとなった(本稿執筆時点では、衆議院では可決され、参議院で審議中である。)。
現行の会社法の下では、株主総会の招集に当たって取締役は株主総会の招集に際して株主総会の「場所」を定めることとされ(会社法298条1項1号)、ここでいう株主総会の「場所」とは、株主が現実に出席することができる場所でなければならないとされていることから、「場所」を定めないバーチャルオンリー株主総会の開催は認められないと解されている。他方で、米国では現在すでに複数の州でバーチャルオンリー株主総会が認められている。そこで、このたび、日本においても、外国等の遠隔地に所在する株主や、株主総会当日の出席が物理的に困難である株主に対する株主総会への参加の機会の保障、および、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下における株主総会の円滑な運営の実現が望まれる中で、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする産競法改正法案が閣議決定される運びとなった。
2 改正産競法の概要
改正産競法に基づいて上場会社である株式会社がバーチャルオンリー株主総会を開催するための要件は、①「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める」一定の要件を満たしていることについて経済産業大臣及び法務大臣の「確認」(以下「大臣確認」という。)を受けた上で、②株主総会を「場所の定めのない株主総会」とすることができる旨を定款で定めることである(改正産競法66条1項・2項)。
また、改正産競法の経過措置により、改正産競法の施行日から2年間に株主総会を開催する場合は、大臣確認を受けることで、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする定款規定があるものとみなされる(改正産競法附則3条1項)。
産競法の改正法案は、公布の日に施行されることとされている(改正産競法附則1条1号)。
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(うぶかた・のりひろ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2007年弁護士登録(第二東京)。2013年ミシガン大学ロースクール修了(LL.M., in International Taxation)。2013年~2014年豪州ブリスベンのClayton Utz法律事務所勤務。2016年から早稲田大学法務教育研究センター講師(租税法担当)。主に、株主総会指導、敵対的買収防衛、アクティビスト株主対応を含む一般企業法務、M&A及び商事訴訟などを取り扱う。
(こだま・るい)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2019年弁護士登録(第一東京)。M&A及び一般企業法務などを取り扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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