SH3666 2021年度 育児・介護休業法改正~2022年4月1日から段階的に施行~ 神尾有香/西内 愛(2021/06/28)

そのほか労働法

2021年度 育児・介護休業法改正~2022年4月1日から段階的に施行~

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 神 尾 有 香

弁護士 西 内   愛

 

1 はじめに

 2021年6月9日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」が公布された(「本改正」という。本改正後の各法律を、それぞれ「改正育児・介護休業法」、「改正雇用保険法」という。本改正前の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律を「改正前育児・介護休業法」という。)。

 少子高齢化に伴う人口減少下において、出産・育児による労働者の離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児を両立できる社会の実現が重要であると叫ばれる中、現状はというと、女性の育児休業取得率83.0%に対して男性の育児休業の取得率は7.48%(厚生労働省「雇用均等基本調査」(2019年))と、依然として低水準で推移し、男女で大きな差が生じている。男性が育児休業を取得しない理由として、業務の都合や職場の雰囲気といったものが挙げられていたことから、業務ともある程度調整しやすい柔軟で利用しやすい制度や、育児休業の申出をしやすい職場環境等の整備といった取組みが重要な課題とされている。また、有期雇用労働者による育児・介護休業の取得について、無期雇用労働者より厳格な要件が課されているという現行法上の問題も指摘されていた。本改正は、このような状況や現行法上の問題点等を踏まえ、その是正を図ろうとするものである。

 主な改正点は、⑴子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、⑵育児休業の分割取得化と1歳以降の育児休業開始日の柔軟化、⑶育児休業を取得しやすい雇用環境整備および妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、⑷育児休業の取得状況の公表の義務付け、⑸有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和、⑹⑴の新制度も育児休業給付の対象に含めるための雇用保険法上の規定の整備等である。

 詳細は追って省令により定められるが、本稿では、本改正の概要について解説する。

 

2 本改正の概要

 ⑴ 子の出生直後の時期における柔軟な育児休業(出生時育児休業)の枠組みの創設

 本改正で特に注目される点は、既存の育児休業制度に加え、男性による育児休業の取得を促進するために、子の出生直後の育児休業のニーズが高いことを踏まえて、子の出生後8週間以内に合計4週間まで取得することができる育児休業(以下「出生時育児休業」という。)が創設されることである(改正育児・介護休業法9条の2から9条の5)。報道では、「男性版産休」と通称されている制度である。

 現行法上、子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合にはその後再度育児休業を取得することができる制度(いわゆる「パパ休暇」)があるが(改正前育児・介護休業法5条2項)、本改正により同制度は見直され、出生時育児休業と育児休業の分割取得化(下記参照)に置き換わる。

 出生時育児休業は、分割して2回まで取得できるほか、労働者の意向により休業期間中に就業することもできる等、業務ともある程度調整して柔軟に利用できるような制度として新設された。

 出生時育児休業の概要は以下のとおりである。

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(かみお・ゆか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル。
2006年慶應義塾大学法学部卒業。2007年弁護士登録(第一東京)。2013年University of Pennsylvania Law School(LL.M., Certificate in Business and Law The Wharton School)修了。2014年ニューヨーク州弁護士登録。
労働案件を中心として、国内外の企業・組織に対し、訴訟対応、ハラスメント調査、コンプライアンス、その他人事・労務に関する諸問題についてのアドバイス等、幅広いリーガルサービスを提供しており、日本の労働法制に知見のない依頼者へのアドバイスも日常的に行っている。

 

(にしうち・あい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2009年慶応義塾大学法学部卒業。2011年東京大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(第一東京弁護士会)後、2015年12月まで狩野・岡・向井法律事務所(現・杜若経営法律事務所)に勤務し、2015年12月に現職。一貫して企業側人事労務に携わる。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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