NTT・NTTデータ、総務省職員との会食問題などを巡り
特別調査委員会「調査報告書」を公表
――費用を等分負担しない会食として政務三役との会食を含む29件を認定、総務省・情報通信行政検証委員会による検証も進む――
日本電信電話(本社・東京都千代田区、東証一部上場。以下「NTT」という)は6月7日、本年3月4日付一部報道により判明した同社経営陣と総務省職員との会食問題などを巡り、同月9日付で設置した特別調査委員会(委員長・榊原定征同社独立社外取締役)から調査結果の報告を受けたとして「調査報告書」を公表するとともに再発防止策、同社代表取締役社長やグループ会社役員ら計16名の処分を発表した。
上記報道に絡んではエヌ・ティ・ティ・データ(本社・東京都江東区、東証一部上場〔2020年9月30日現在のNTTの持株比率は54.19%〕。以下「NTTデータ」という)においても3月9日、特別調査委員会(委員長・佐藤りえ子同社独立社外取締役〔監査等委員〕)の設置を発表し、6月7日、同委員会による「調査報告書(公表版)」の発表に至っている。NTTが今般公表した調査報告書(以下「NTT報告書」という)によると、本件調査の対象は2016年4月1日~2021年3月16日に実施された「NTTグループ経営陣と、総務省幹部等との間の会食」であり、ここにいう「NTTグループ」とは、NTTに加え「NTTグループの売上高の約9割を占める主要な各セグメントの中核企業であり、かつ、総務省を監督官庁とし、重要な経営判断を行っている主要5社」となるNTT東日本・NTT西日本・NTTコミュニケーションズ・NTTドコモ・NTTデータを指す。ただし、NTTデータにあっては上述のように独自の特別調査委員会を設置して調査を行っており、NTTの特別調査委員会としては「NTTデータの経営陣が行った会食に関しては、NTTデータの調査方法を検証することによりその適切性等を確認し、詳細についてはNTTデータ特別調査委員会の報告書に依拠し」たとする。
NTT報告書によると、(1)費用を等分負担していなかった会食として計29件を認定。各社ごとの内訳はNTT15件、NTTドコモ12件、NTTデータ2件などとなる。このうち総務省幹部との会食は24件、総務省政務三役との会食は5件であった。一方で(2)①会食において総務省幹部等による便宜供与やNTTグループからの便宜供与の依頼等があったとは認められず、贈賄罪には該当せず、また、②NTTによるNTTドコモ完全子会社化やNTTドコモによる携帯電話料金の値下げなどについて行政の判断がゆがめられたという事実も確認されなかった。結論として(3)「本件会食のうち、総務省幹部が参加しているものは、当該総務省幹部が国家公務員倫理規程第3条第1項第6号に違反する結果を招いたものであり、NTTグループ経営陣は、かかる法令違反を誘発・助長した点で、非難を免れることはできない。また、総務省政務三役が参加しているものは、国民の疑惑を招きかねない会食であった」と述べている。原因・背景の一つとして国家公務員倫理法・倫理規程および大臣規範に関する知識・感度の不足等を挙げたうえで、特別調査委員会が提言する再発防止策として(ア)NTTグループ各社で共通となる会食に関するルールの制定・明確化の実施、(イ)国家公務員倫理法・倫理規程および大臣規範に関する研修の実施、(ウ)経営陣の発案した会食に対する法務コンプライアンス部門による事前チェックなど牽制機能の強化と組織風土改革――などを掲げたものである。
NTTでは6月4日、再発防止に向けた取組みとし、たとえば上記(ア)に関しては①公務員・政治家との応接に関する行動規範の「NTTグループ企業倫理憲章」への明記、②NTTにおいて利害関係のある政務三役、公務員等との個別の会食を原則実施しないことなどを主な内容とする「社外との接遇に関する規程」の新設などを発表した。
なお、総務省職員と本件NTTグループの会食等および東北新社の会食等(SH3646 東北新社、総務省職員との会食問題などを巡り特別調査委員会「調査報告書」を公表――会食54件を認定、外資規制抵触問題での「不当な働きかけ」は認められず (2021/06/02)既報)を巡っては3月16日、民間の外部有識者で構成される情報通信行政検証委員会(座長・吉野弦太弁護士)が総務省に設置され、まずは東北新社に係る認定申請およびその前後の過程で会食により行政がゆがめられることがあったか否かの検証から着手。6月4日に「検証結果報告書(第一次)~東北新社の外資規制違反等の問題について~」が公表された。
東北新社グループ案件の調査を優先させた理由として「外資規制への抵触について総務省職員が報告を受けたか否かについて、両当事者の主張が明らかに食い違い、その解明が喫緊の課題というべき状況にあったこと」も挙げられているところ、結論として(α)2017年中に総務省が行った本件関連の事業者認定および承継の認可の決裁に関与した職員の会食4件・5人を認定するも、会食において外資規制違反の事実の伝達や対応方針の相談が行われた事実は確認されず、委員補足意見として(β)「結果的に、多くの者が国家公務員倫理法に抵触するような会食が数多く行われることとなったことは、重く受け止めるべきである」と指摘。上記・第一次報告書の公表と同日となる6月4日付で「NTTグループに係る政策決定に関し指摘されている事柄について議論していくため」委員1名を追加し、計5名体制とした。6月4日にはまた「外資規制の実効性の確保や在り方の見直しが喫緊の課題」であるとし、情報通信分野における外資規制の在り方に関する検討会(座長・山本隆司東京大学大学院法学政治学研究科教授)の新設・開催が発表されている状況である。