◇SH0210◇中国:【重要法令情報】外国投資法(パブコメ版)の公布(その1) 川合正倫(2015/02/05)

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中国:【重要法令情報】外国投資法(パブコメ版)の公布(その1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 商務部は、2015年1月19日に「外国投資法」の草案を公布した。外国投資法は、外資三法をはじめとする外国資本による中国への投資に関する規定を整備統合した新たな法令である。外商投資企業の根拠法である外資三法(外資企業法、中外合弁企業法、中外合作経営企業法)は外国投資法の施行後に廃止されることになり、各企業は対応が必要となる。

 現行法のもとでは、独資や合弁といった投資形態により適用される法令が異なり、また法令間相互に整合性を欠く部分があったが、外国投資法の施行後は、外資三法が廃止される結果、外国資本による投資に対しては一律に外国投資法及び会社法が適用されることになる。

 今回公布されたパブリックコメント版については、今後内容に若干の変更があるものと思われ、また、施行時期は2017年以降になると考えられており、即座に何らかの対応が必要という状況にはない。しかしながら、外商投資企業にとって非常に重要な法令の抜本的な改正であり、中国事業関係者は新法案の概要を理解しておくことが望まれる。そこで、本稿及び次稿において公布された規定案(11章170条)のうち、重要点に絞って紹介する。

外国投資に関する規定が一本化された重要法令

 現行法は独資(外国資本100%)、中外合弁、中外合作といった投資形態別に適用される法令が異なるが、外国投資法は投資形態に関わらず一律に適用されるという点で、非常に重要な法令といえる。

外資三法の廃止に伴う対応

 外国投資法の施行に伴い現行の外資三法は廃止される予定である。また、董事会や株主会といった会社の機関設計は外国投資法の範囲外とされている。このため、外商投資企業の機関設計については、一律に会社法に従うことになる。例えば、現行の中外合弁企業においては董事会が最高意思決定機関とされているが、外資三法廃止後は、中外合弁企業においても会社法に従い株主会が最高意思決定機関となるため、定款や合弁契約を変更する必要があり、合弁パートナーとの交渉等の対応が必要となる。

 このように非常に大きな影響が生じるため、新法への移行期間が設定されており、具体的には、外国投資法施行前に設立された外商投資企業については施行(2017年以降の予定)から三年以内に会社法に従い機関設計等を調整する必要がある。

ネガティブリスト制の採用・事前審査制から事後報告制へ移行

 現行制度の下では、外商投資企業の設立、定款変更、持分譲渡といった重要事項については、関連政府当局の事前認可を取得する必要があるが、外国投資法のもとでは、ネガティブリストに列挙された特定の禁止・規制業種を除き、新たに制度化される事後報告の対象となり、現行の事前認可制度は廃止される。

 ネガティブリストによる管理は、上海自由貿易試験区でも試験的に導入されている制度であり、規制が必要な特定の業種をネガティブリストにリストアップし、当該リストに記載されている業種以外の業種に対しては、原則として自由な投資活動を認める管理制度である。事前審査が必要な場面が大幅に減少されるため、中国における投資活動の機動性及び柔軟性が向上することが期待される。

次稿に続く

 

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