SH3671 監査等委員である取締役の選任議案について監査等委員会の請求による会社提案議案とアクティビスト提案の議案が対立――天馬株式会社2021年6月29日付定時株主総会 福地拓己(2021/07/02)

組織法務株主総会

監査等委員である取締役の選任議案について監査等委員会の請求による会社提案議案とアクティビスト提案の議案が対立
――天馬株式会社2021年6月29日付定時株主総会――

岩田合同法律事務所

弁護士 福 地 拓 己

 

1 本公表の概要

 天馬株式会社(以下「天馬社」という。)の2021年6月29日付の定時株主総会(以下「本総会」という。)では、監査等委員である取締役の選任議案について、会社から3名の候補者の選任議案が提出された一方で(以下「本件会社提案」という。)、アクティビスト[1](以下「本件アクティビスト」と総称する。)から、他の3名の候補者の選任議案(以下「本件株主提案」という。)が提出された[2]

 天馬社では経営陣と監査等委員会の対立が生じており、本件会社提案は、監査等委員会が会社法344条の2第2項に基づき取締役に対し議案提出を請求したことにより提出されたものであった。そのため、取締役会は、監査等委員会による本件会社提案に反対する意見を表明した上で、本件アクティビストによる本件株主提案に賛成する意見を表明した。

 そうした中、天馬社は、同月18日付の「議決権行使助言会社グラスルイス社による当社第73回定時株主総会議案に対する賛否推奨レポートについて」と題するプレスリリース(以下「本公表」という。)において、議決権行使助言会社であるGlass Lewis & Co., LLC(以下「グラスルイス社」という。)が、これらの議案について、取締役会の意見と同じ賛否推奨を行ったことを公表した。

 なお、本総会では、監査等委員でない取締役の選任議案についても株主提案がなされており、各議案の提案者、取締役会及び監査等委員会の賛否並びにグラスルイス社の賛否推奨の概要は以下のとおりである。

 

提案者 議案の概要 賛  否 グラスルイス社の
賛否推奨
取締役会 監査等委員会
天馬社
(監査等委員会)
監査等委員である取締役3名の選任議案 反対 賛成 反対推奨
本件アクティビスト 監査等委員である取締役3名の選任議案 賛成 反対 賛成推奨
天馬社
(取締役会)
監査等委員でない取締役7名の選任議案 賛成 4名に
ついて反対
賛成推奨
株主[3] 監査等委員でない取締役3名の選任議案 反対 反対推奨

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(ふくち・たくみ)

岩田合同法律事務所弁護士。2014年早稲田大学法学部卒業。2016年一橋大学法科大学院卒業。2017年弁護士登録、高井・岡芹法律事務所勤務(~2020年)。著作には、『2020年版 年間労働判例命令要旨集』(共著、労務行政、2020年)、『判例解説 解雇・懲戒の勝敗分析』(共著、日本加除出版、2020年)がある。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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