◇SH3782◇消費者庁、株式会社T.Sコーポレーションに対し、アフィリエイト広告の表示について景品表示法に基づく課徴金納付命令 堀 優夏(2021/10/08)

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消費者庁、株式会社T.Sコーポレーションに対し、アフィリエイト広告の
表示について景品表示法に基づく課徴金納付命令

岩田合同法律事務所

弁護士 堀   優 夏

 

1 はじめに

 消費者庁は、令和3年9月22日、株式会社T.Sコーポレーション(以下「違反会社」という。)に対し、アフィリエイト広告の表示について不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)に基づく課徴金納付命令(以下「本命令」という。)を発出した。消費者庁は、令和3年3月、違反会社に対し、アフィリエイト広告の表示について景表法に基づく初の措置命令を発出していたが[1]、今般、これに加えて課徴金納付に係る命令を発出したものである。

 本稿では、本命令の概要を紹介する。

 

2 アフィリエイト広告とは

 アフィリエイト広告とは、ブログその他のウェブサイト(以下「アフィリエイトサイト」という。)の運営者(以下「アフィリエイター」という。)が、同サイトに、広告主が供給する商品等の画像を掲載するバナー広告のうち、消費者がバナー広告を通じて広告主の商品等を購入した場合など、予め定められた条件に従って、アフィリエイターに対して、広告主から成功報酬が支払われる仕組みの広告である。かかる報酬形態から、アフィリエイトサイトには、バナー広告に加えて、アフィリエイターがバナー広告への誘引を図るための記載を行うことが多い点で、従来からの定額報酬・クリック報酬型のバナー広告とは異なる。

 アフィリエイト広告の全体像は以下の図のとおりであり、①広告主がアフィリエイトサービスプロバイダー(以下「ASP」という。)を介してアフィリエイトサイトへの広告掲載を依頼し、②アフィリエイターは、ASPが取り扱う広告主の中からアフィリエイト広告を選択して自らのアフィリエイトサイトに掲載し、③広告主は、ASPの測定した成果に応じて、ASPを経由してアフィリエイターに対して成功報酬を支払うというのが、一般的な商流である。

 

消費者庁・令和3年6月10日付け「アフィリエイト広告をめぐる現状と論点」8頁より

 

3 本命令の概要

 消費者庁が公開したリリースによれば、本命令の概要は、以下のとおりである。

 ⑴ 課徴金対象行為(違反行為)に係る商品

 「BUBKA ZERO」と称する育毛剤を含む二つのセット商品(以下「本件商品」という。)

 ⑵ 課徴金対象行為

 以下の表のとおり。なお、広告主である違反会社は、本件商品の販売に関し、アフィリエイト広告を用いており、ASPを通じて、本件商品に係る「表示内容」欄記載の表示を自ら決定していた。

表示媒体 アフィリエイトサイト① アフィリエイトサイト②
課徴金対象行為期間 令和元年9月25日 令和元年7月30日
表示内容 「医療関係者も勧める『90%がフサフサになった育毛剤』がヤバイ!」、毛髪が薄い頭頂部の画像及び毛髪が濃い頭頂部の画像を矢印で結んだ画像と共に「たった2ヶ月で髪がフサフサに(中略)!今ではもう頭皮が見えないくらい生える(中略)まるで20代に戻ったみたいです」等と記載し、あたかも本件商品を使用するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、短期間で、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果が得られるかのように示す表示をしていた。 「世界的な科学誌が推奨の毛髪再生法 有名医科大のマウス実験で実証済!試した90%以上がボリューム復活!?」、「長年ハゲとバカにされてきた私がたったの1か月で」、並びに「before」と記載のある毛髪が薄い頭頂部の画像及び「after」と記載のある毛髪が濃い頭頂部の画像と共に、「『カツラ!?』同僚から疑われましたw」等と表示することにより、あたかも、本件商品を使用するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、短期間で、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果が得られるかのように示す表示をしていた。
実際 消費者庁は、「表示内容」欄の表示について、それぞれ、景表法8条3項の規定[2]に基づき、違反会社に対し、期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたが、違反会社から示された資料はいずれも合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
打消し表示[3] 「※イメージです」、「※個人の感想です。」と表示したが、打消し表示とは認められない。 「※画像はイメージです」、「※イメージ」と表示したが、打消し表示とは認められない。

 ⑶ 課徴金対象期間

 令和元年7月30日から令和2年3月25日までの間

 ⑷ 課徴金額

 1747万円

 

4 本命令に関する解説

 ⑴ 景表法上の規制について

 景表法は、事業者による自己の供給する商品又は役務に関する優良誤認表示(景表法5条1号)[4]や有利誤認表示(景表法5条2号)[5]であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものについて禁止しており、これに違反した場合には、措置命令(景表法7条1項)や課徴金納付命令(景表法8条1項)の対象となる。なお、課徴金は、原則として課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品等の売上額の3%と定められている(同項)。

 ⑵ アフィリエイト広告と景表法上の規制

 前記のとおり、景表法は、自己の商品を供給する事業者による表示を規制するものであるため、アフィリエイターやASPは規制対象とならず、広告主のみが規制対象となる。

 そして、アフィリエイト広告のうち、バナー広告部分については、広告主が表示するものであるから、景表法上の規制を受ける。また、バナー広告への誘引を図るためにアフィリエイターが記載する部分についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合も含む。)には、広告主は、景表法上の措置を受けるべき事業者に当たるというのが消費者庁の見解である[6]

 ⑶ 本命令について

 本命令は、違反会社の販売する本件商品に関するアフィリエイトサイト上の表示内容(前記3⑵の表の「表示内容」欄)が優良誤認表示に該当するとし、違反会社に対し、課徴金納付を命じたものである。本件では、違反会社が、ASPを通じて、アフィリエイトサイト上の表示内容を自ら決定していたことから、景表法上の措置を受けるべき事業者に当たるとされたものと思われる。

 

5 おわりに

 令和3年6月10日、消費者庁は、景表法の適用に関する考え方や不当表示の未然防止等のための取り組みなどを議論する「アフィリエイト広告等に関する検討会」を発足させ、アフィリエイト広告に関する実態調査を進めるなど、アフィリエイト広告の規制強化に向けた取組みを実施している。消費者庁は、実態調査の結果や検討会での議論等を踏まえて、年内にも一定の結論を出すとしており、今後の動向が注目される。

以 上

 


[1] 具体的には、違反会社に対し、後記3⑵の課徴金対象表示について、優良誤認表示に当たり景表法に違反する旨の周知を行うとともに、再発防止策を講じるよう措置命令を発出していた(https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210303_1.pdf)。

[2] 消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。事業者から合理的な根拠が示されない場合には、措置命令及び課徴金納付命令との関係で不当表示とみなされ、又は推定される(景表法7条2項、8条3項)。

[3] 強調表示(事業者が、自己の販売する商品等を一般消費者に訴求する方法として品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示)について、例外等がある場合に行うべき表示のことであり、これが適切に行わなければ、強調表示は、不当表示(優良誤認・有利誤認表示)となる。

[4] 自己の供給する商品等の品質、企画その他の内容について、一般消費者に対し、その内容を実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品等を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示。

[5] 商品等の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品等を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示。

[6] なお、アフィリエイト広告に関する事案ではないが、景表法4条1項3号に該当する不当な表示を行った事業者とは、「表示内容を決定し又は表示内容の決定に実質的に関与した者」のことをいうとした裁判例として、東京高判平成20・5・23別冊ジュリスト199号(2010)270頁がある。


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(ほり・ゆうか)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2013年九州大学法学部卒業。2015年京都大学法科大学院修了。2017年1月判事補任官。神戸地方裁判所勤務を経て、2020年4月「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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