金融審議会「市場構造専門グループ」が報告書を取りまとめ
――市場区分やTOPIXの変更開始、想定としては「2022年上半期」目途――
金融庁は12月27日、金融審議会市場ワーキング・グループ「市場構造専門グループ」(座長・神田秀樹学習院大学大学院教授)が「市場構造専門グループ報告書~令和時代における企業と投資家のための新たな市場に向けて~」を取りまとめたとし、公表した。
市場構造専門グループでは市場区分の再設計など市場構造のあり方を課題として2019年5月17日に初会合を、5月31日に第2回会合を開催し、まずは東京証券取引所や専門グループ委員、市場関係者等から意見を聴取(SH2744 金融審議会「市場構造専門グループ」の審議が進む――指名・報酬委員会の設置の一部上場要件化、TOPIXの公表停止も議論の俎上に (2019/08/29)既報)。10月に開催した第3回・第4回会合においては地方に本拠を置く上場企業、東京に本拠を置く新興企業、学識経験者、経済産業省からのヒアリングを進め、11月の第5回会合では「市場構造の見直しに関する論点」とともに「市場構造の見直し案のイメージ」を提示するに至っていた。12月25日に開かれた第6回会合において今般の報告書案について審議、同月27日、確定された報告書が公表されたものである。
報告書における提言の主眼は、A)東証に現状5つある市場区分を「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」(いずれも仮称)の3つに再編すること、B)東証株価指数TOPIXについて、市場区分とTOPIXの範囲を切り離すこと。これらのうち上記Aを具体的にみると、3市場への再編は各市場のコンセプトを明確化しようとするもので、プライム市場については「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額・流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場」と位置付けた。
時価総額としては「流通時価総額」を基準とし、ガバナンスとして「我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場にふさわしいガバナンスの水準を求めていく必要がある」とする。ガバナンスについては今後「コーポレートガバナンス・コードなどの改訂等を重ねる毎に他の市場と比較して一段高い水準のガバナンスを求めていくことなどによってガバナンスを向上させる必要がある」との指摘があるほか、「今後のデジタル化の急速な進展に伴うビジネス等の変革に対応したガバナンスという視点も重要である」とする点に留意しておきたい。
ただし、今般の報告書では「より高いガバナンスについてのコミットメントを行う限りにおいて」現在の市場第一部上場企業が新たな流通時価総額基準を満たしていないとしてもプライム市場の選択を希望する場合には「当分の間、プライム市場への上場・上場維持を基本的に認めることが適当」などとし、一定の条件のもと、既存の市場第一部上場企業がその選択によって引き続きプライム市場に上場することを可能としている。
スタンダード市場は「主として現在の市場第二部及びJASDAQスタンダードに属する企業から構成される」と考えられており、「一定の時価総額、流動性を持ち、基本的なガバナンス水準の達成やそれぞれの企業に適した方法で持続的な成長や中長期的な企業価値の向上を目指すことへのコミットメントを求める」ものと位置付けられた。現時点でJASDAQスタンダードに上場している企業については、市場第二部上場企業においてコーポレートガバナンス・コードの全原則が適用されている現状にガバナンスの水準を引き上げることを前提として「移行への負担に配慮する必要」が言及されている。
グロース市場については「基本的に現在のマザーズ及びJASDAQグロースの上場企業が移行する」ことを想定。機関投資家の参入を進めるための方策に関しては「機関投資家の投資を呼び込んでいるマザーズ上場企業の好事例集の策定、上場時の株主数基準の見直しや上場時の投資家への配分の在り方など」を例示しつつ、幅広い観点から検討することが考えられると指摘するにとどまった。
適用時期として、東証の各種規定改正や周知期間を十分に設けたうえで「速やかに実施することが望ましい」とし、より具体的には「2022年上半期を目途として市場区分やTOPIXの変更を開始することが想定される」としている。