◇SH3862◇SBIホールディングスらによる新生銀行株式の公開買付けが成立、連結子会社化で同行内に独立社外取締役選定委員会を設置――双方協調の合意により新生銀行は反対意見を中立意見に変更、買収防衛策承認の臨時株主総会は開催中止に (2021/12/22)

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SBIホールディングスらによる新生銀行株式の公開買付けが成立、
連結子会社化で同行内に独立社外取締役選定委員会を設置

――双方協調の合意により新生銀行は反対意見を中立意見に変更、
買収防衛策承認の臨時株主総会は開催中止に――

 

 SBIホールディングス(本店・東京都港区、東証第一部上場。以下「SBIHD」という)およびSBI地銀ホールディングス(本店・東京都港区。以下「SBI地銀HD」という)は12月11日、SBI地銀HDを公開買付者として新生銀行(本店・東京都中央区、東証第一部上場)の普通株式を対象に1株当たり2,000円で実施していた公開買付けが12月10日に終了したとし、SBIHDらが本公開買付けの決済の開始日である12月17日をもって(a)56,922,199株(議決権所有割合:27.28%)を取得価額113,844百万円で取得(買付予定数の上限を超えなかったことから応募株券等の全部の買付け等を行う)、(b)公開買付開始時点で保有していた普通株式と合わせて99,659,999株(議決権所有割合:47.77%)を保有することとなり、(c)新生銀行がSBIHDの連結子会社となる予定であると発表した。

 SBIHDらが9月9日に発表、9月10日を公開買付開始公告日として行った本公開買付けを巡っては新生銀行が9月17日、株主意思確認総会による承認を前提とするいわゆる買収防衛策の導入を決定・発表。10月21日には反対意見を表明しつつ、(ア)本公開買付けを買付予定数の上限のない公開買付けとすることなど、(イ)本公開買付価格を一定の価格水準まで引き上げることを条件(以下「賛同要件」という)として、これらが11月19日までに満たされた場合には賛同意見を表明するとしたことから帰趨が注目されていた。なお同日、株主意思確認総会となる臨時株主総会を11月25日に開催することも発表された(SH3815「新生銀行、SBIホールディングスらによる公開買付けに対して賛同のための条件を提示する反対意見を表明――買収防衛策に係る株主意思確認総会の3営業日前までの要件充足で対抗措置発動せず(2021/11/04)」既報)。

 新生銀行はその後、上記臨時株主総会における上程議案について議決権行使助言会社グラス・ルイスが賛成推奨していること(11月5日発表)、ISSも賛成推奨したこと(11月8日発表)を明らかにしながら、11月15日には同行が東京地裁に申し立てていた株主総会検査役の選任が11月12日付でなされたことを発表。11月22日、「本臨時株主総会において本プランに基づく対抗措置としての新株予約権の無償割当てが承認された場合」のこととして、買収防衛策上の暫定措置としての「甲種新株予約権の無償割当て」に係る基準日を12月8日に設定するなどしていた。

 SBIHDらは11月12日、「株式会社新生銀行(証券コード:8303)の買収防衛策に対する議決権行使助言会社のレポート発行を受けた公開買付けに関する補足説明」と題する文書を発表。このなかでSBIHDらは「ISSらの賛成推奨の内容及び当社らの基本的な見解」として賛成推奨の根拠とされた5点を示したうえで、「当社ら(編注・SBIHDら)の見解」として1点ごとに説明・反論した。

 なお、この間に26,912,000株(9月30日現在。発行済株式総数に対して12.89%)を保有する大株主・預金保険機構が11月5日、新生銀行・SBIHDらにそれぞれ同日付で送付した「ご質問書」を同機構ウェブサイトで公開している。臨時株主総会の議案の検討にあたり、新生銀行に対しては「当機構も貴行の株主として、当該議案について真摯に検討を行い、適切な対応を行っていく所存でございます」としつつ、「これまでも貴行の開示に基づき検討を重ねて参りましたが、より慎重な判断を期すために、当機構として検討に必要な事項を下記にてお尋ね申し上げます」として、11月12日までに「適時開示の方法によりご回答」を求めるものとなった。質問は端的に次の2点。1.株式会社新生銀行の本源的価値はどのような分野・業務にあると考えているのかお示しいただきたい。2.公開買付価格2,000円が本源的価値を十分に反映していないとのことであるが、本源的価値が株価に反映されるために、また本源的価値をさらに高めていくために、今後どのような経営を行っていくのかお示しいただきたい。

 SBIHDらに対しても同機構の姿勢・回答方法については同様に示したうえで、項目としては3つに分けながらも、①SBIHDらの「資本業務提携先の地域金融機関と新生銀行の協業により両者にどのようなシナジー効果があるのか、特に新生銀行の企業価値向上の観点からどのような貢献が見込まれるのか」についてお示しいただきたいとする質問を始めとし、②新生銀行がSBIHDグループに入ることでSBIHDグループに生じる企業価値の向上についてどのように考えているか、また、③その企業価値の向上について新生銀行の少数株主も利益を享受するために、SBIHDグループ内での新生銀行の位置付けにつき今後の資本関係を含めてどのように考えているか、④(新生銀行の取締役会の構成が金融機関としての安定性の観点からも極めて重要であること、SBIHDらが3人の取締役候補を推薦したうえで独立社外取締役を取締役会の過半とするとしていることを指摘したうえで)「独立社外取締役を真に独立したものとするための選定方法」や「社内登用の可能性を含め、SBIHDらが支配株主となった場合の新生銀行の取締役会の構成」に係る見解を問うものとなった。以上の質問書に対しては新生銀行・SBIHDらともに11月12日、回答を行っている。

 新生銀行は臨時株主総会の開催を翌日に控えた11月24日、「(開示事項の変更)当行株式に対する公開買付けに関する意見表明の変更(中立)および臨時株主総会開催中止に関するお知らせ」を発表した。10月21日付「反対(賛同のための条件を提示)」の意見表明を変更して「中立の意見を表明するとともに、買収防衛策に基づく対抗措置の発動の必要がなくなったことから2021年11月25日に予定されていた当行臨時株主総会(株主意思確認総会)の開催を中止することを決議いたしました」とするもので、同日開催の取締役会において取締役全員一致でなされたこととともに同行の独立社外取締役5名で構成する「独立社外取締役協議会」から適当である旨の勧告・意見を受けていること、全監査役が上記決議を行うことに異議がない旨の意見を述べていることを併せて明らかにしている。

 本発表によると、新生銀行が掲げた本公開買付けの賛同要件については、SBIHDから11月19日までにこれらを充足する意思は確認できなかった。このため「当行からSBIHDに対して、SBIHDが、2021年11月12日に当行が公表した預金保険機構からのご質問への回答書に記載された当行グループの経営方針・事業戦略を尊重することおよび業務運営の安定性を考慮した経営体制の移行を行うことが確認できれば、株主の共通の利益の毀損が生じるおそれが小さくなったものと評価しうることを伝え検討を求めた」という。

 SBIHDからは本発表と同日となる11月24日、「これに同意し、双方で協調して当行の企業価値向上に努める意向である旨の回答」があった。新生銀行としては「企業価値や株主の共同の利益に毀損が生じるおそれが小さくなり、強圧性の度合いが下がった」ものと評価、「株主の共通の利益を保護するために大量買付行為自体を阻止することが必要な状況ではなくなったと判断いたしました」とする。結果、(1)対抗措置を発動させる必要もなくなったことから臨時株主総会の開催は中止し、(2)公開買付けに応じるかについては個々の株主の判断に委ねることが妥当であり、同行としては中立の意見を表明することとしたものである。併せて新生銀行は、新株予約権無償割当てなどに関して11月22日付で設定した基準日(12月8日)について、これを取り消す発表を行っている。

 SBIHDらにおいても11月24日、「対象者(編注・新生銀行)と協議し、対象者が本年11月12日に公表した預金保険機構からの質問事項に関する回答書に記載の内容を尊重し、双方で協調して対象者の企業価値向上に取り組むことで合意いたしました」と発表。(1)新生銀行が反対意見を変更して中立とする意見表明を行ったこと、(2)SBIHDらとしては本公開買付価格(1株当たり2,000円)・買付予定株式数の上限(58,211,300株)について変更の予定はないことを述べつつ、株主には「本公開買付けに是非とも応募いただきますようお願い申し上げます」と呼びかけた。なお、このような動きを受けて公開買付期間の変更が11月26日に発表、変更前:12月8日まで(60営業日)は変更後:12月10日まで(62営業日)と延長された。

 新生銀行は12月13日、任意かつ臨時の委員会として「独立社外取締役選定委員会」を設置することとなったと発表した。SBIHDらおよび新生銀行の両者から独立していると捉えられる弁護士2名・公認会計士1名の計3名で構成。SBIHDらが預金保険機構宛の11月12日付回答書において提案していたもので(新生銀行も11月24日付発表で言及)、独立社外取締役の候補者についてSBIHDらの独自の裁量によるのでなく、同委員会の組成により「透明かつ客観的なプロセスを経て選定する」ことを企図する。今般の発表によっては「同委員会が選定した当行独立社外取締役候補者は、当行指名・報酬委員会へ提案され、指名・報酬委員会の決議を経て、当行取締役会へ提案される予定」と位置付けられている。

 新生銀行の取締役会ではこれを受け、独立社外取締役候補者を同行取締役に選任するための臨時株主総会を2022年2月初旬を目途に開催する運びである(12月3日付「臨時株主総会招集に係る基準日設定に関するお知らせ」を併せて参照)。なお、新生銀行は公開買付けに対する対抗措置として9月17日付で決定・導入した基本方針・買収防衛策について12月13日付で廃止することとし、9月22日付で行った新株予約権無償割当てに係る発行登録についても12月13日付で取り下げた。

 これまでに表明されるところでは、SBIHDは今後「新たな役員体制の下で新生銀行の企業価値向上への道筋がついた段階で、当局の理解が得られれば、必要な銀行持株会社認可を取得した上で、一般株主の利益に十分配慮した形で、新生銀行の過半数以上の株式を取得することを検討する」予定である(12月10日付「一部報道について」など参照)。

 

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