有識者会議による経済安全保障法制に関する提言骨子の公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 松 本 拓
弁護士 後 藤 大 智
1 はじめに
2022年1月19日、内閣官房より、経済安全保障法制に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)による「経済安全保障法制に関する提言骨子」(以下「提言骨子」という。)が公表された[1]。
経済安全保障を最重要課題の一つに掲げる岸田内閣は、2022年通常国会に提出予定の経済安全保障推進法案の策定に向けた検討を行うため、2021年11月下旬有識者会議を発足させた。現在、有識者会議は同法案策定に向けた提言の準備を進めており、提言骨子は過去3回の有識者会議の結果を受けた提言の大枠を示すものとして公表された。
2 背景
有識者会議では、経済政策を安全保障の観点から捉え直すこと(=経済安全保障)の必要性が高まっている原因として、以下の状況が進展する中で国民の安全・安心に対する新たなリスクが顕在化している近年の動向を挙げている。
- ① 新興国の経済成長とグローバル・バリューチェーンの深化に伴う国際分業体制の変化による、半導体や医療品等の重要物資を含めた特定の物資について国際的な供給ショックに対するわが国の脆弱性の増大
- ② 産業基盤のデジタル化と高度化に伴う、サイバー攻撃による脅威・影響の顕在化、半導体不足の影響の甚大化
- ③ 安全保障の裾野が経済・技術分野に急速に拡大したことに伴う、各国による経済的手段を用いた安全保障上の国益追及の動きの顕著化(たとえば、安全保障上の脅威等への有効な対応策としての先端技術の研究開発・活用の推進、技術流出防止対策の強化等)
上記のような動向を踏まえ、有識者会議では経済安全保障について以下の4分野の法制化が必要であると考えられており、各分野につき分野別の検討会合を通して検討が進められてきた。
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(まつもと・たく)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。主要な業務分野は、①M&A・投資、②アウトバウンド・インバウンド、③スタートアップ法務・投資、④経済安全保障・通商、⑤ウェルス・マネジメント及び⑥競争法関連。2012年インドネシアのSSEK法律事務所勤務、2016年コロンビア大学・ロースクール(LLM)修了、2016年~2017年米国のSeward & Kissel法律事務所勤務。https://www.amt-law.com/professionals/profile/TUM
(ごとう・だいち)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2016年東京大学法学部卒業。2018年東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会)。ファイナンス、資源・エネルギー法務、通商法務等を取扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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