個人情報委、日米欧における個人データの越境移転に関する
実態調査結果報告書
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 井 上 乾 介
1 はじめに
去る令和4年1月27日、個人情報保護委員会[1]は「日米欧における個人データの越境移転に関する実態調査 調査結果報告書」[2]を公表した。
本稿では、委員会が実施した実態調査[3]を含む本調査報告書の概要を紹介し、個人データの越境移転について日本企業への示唆を考える。
2 調査報告書の概要
⑴ 調査の背景・目的
ア EUから日本、日本から米国への個人データ流通
まず、これまでの欧州連合[4]と米国の間の個人データ流通は、EUが、EUと米国政府間の協定である米欧プライバシーシールドに対して十分性認定を行うことで、EU域内からプライバシーシールドに基づく米国の自己認証企業へのEU域内の個人に関する個人データ[5]の流通を確保していた。
また、EUから日本へのEU個人データの移転について、日本は日本とEUと間の相互のいわゆる十分性認定に基づき、EUとの間の個人データの流通を確保している[6]。これを受けて、日本の個人情報保護法は、EUまたは英国域内から十分性認定に基づき提供を受けたEU個人データを、補完的ルールに基づいて取り扱うことを義務付けている[7]。
個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対し、日本から日本国外へのEU個人データの移転に当たっては、例外に該当する場合を除き、個人情報保護法24条[8]に従い、本人に対し、同意の判断を行うために必要な移転先の状況についての情報を提供した上で、あらかじめ外国にある第三者への個人データの提供を認める旨の本人の同意を得ることを義務付けている[9]。
このような前提の下、委員会は「EUから十分性認定に基づき日本に移転してきたデータを米欧プライバシーシールドに基づく米国の自己認証企業に再移転する包括的な仕組み」[10]を構築し、EUから日本、日本から米国へのEU個人データの安定的な流通を図ることを目指してきた[11]。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
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