文化庁、「コンテンツの海外展開事例集~ライセンス契約上のポイントを中心に~」を発行
――主には中小規模の事業者向け、著作権の基礎知識から「キャラクター」「アニメ」など代表的7分野の対応例まで――
文化庁は3月31日、同庁調査事業「コンテンツビジネスの国際展開に向けた著作権契約の在り方に関する調査研究」の成果として「コンテンツの海外展開事例集~ライセンス契約上のポイントを中心に~」を作成したと発表した。
主な対象読者は、海外展開を目指す中小規模のコンテンツ事業者。「デジタル技術の発展等を受けてマーケットがグローバル化し、コンテンツの流通形態が変化している状況においてコンテンツ産業が持続的に発展するためには、海外市場の開拓とともに、コンテンツ制作・流通に関わる各プレイヤーが契約を通じて適切な対価を確保することが必要」とする認識のもと、外部委託による調査結果に基づき、文化庁名義で発行したものである。
表紙・目次などを含め全40頁建て・フルカラーで提供されている本事例集は(ア)著作権やライセンス契約に関する基礎知識、(イ)分野ごとの海外展開事例、(ウ)コンテンツの海外展開に際して受けられる支援――の3つの観点から編まれた。第1章「本事例集の制作の背景と目的」を始めとする全4章構成となっており、上記(ア)を本編たる第2章「海外展開に向けて知っておくべき基礎知識」において、また(イ)を第3章「海外展開事例」で、(ウ)を第4章「海外展開に係る支援メニュー」でそれぞれ対応させ、織り込んでいる。
第2章「海外展開に向けて知っておくべき基礎知識」では8頁分を用い、(1)著作権の基礎知識、(2)ライセンス契約の基礎知識を解説。(1)では、まず著作権・著作者人格権・著作財産権・著作隣接権とは何かといった概説とともに「著作権の保護の効果」として①望まない改変の防止、②創作へのインセンティブ付与、③独占的な利用権の設定を挙げる。続いて(A)著作物の内容を改変して利用するにあたり注意すべき権利として(A1)翻案権・翻訳権、(A2)二次的著作物の利用に関する原著作権者の権利、(A3)著作者人格権を取り上げ、各権利に関してライセンス契約に際しての留意点を掲げるほか、(B)映像作品や音楽等を利用するにあたり注意すべき権利(著作隣接権)について(B1)実演家の権利、(B2)レコード製作者の権利(原盤権)、(B3)放送事業者/有線放送事業者の権利といったかたちで敷衍していく。
これらの分類に基づき、展開元の作品が「マンガ」「キャラクター」「アニメ」「ドラマ」「音楽」などのいずれの分野のものか、マンガである場合にはその展開が「翻訳版の出版」「アニメ化」であるのかといった場合分けに応じ、上記(A1)・(A2)については「原作品の内容を改変利用するにあたり、許諾が必要となる行為の具体例」を示すとともに、上記(B)については展開元の作品ごと「映像作品や音楽等の利用にあたり著作隣接権の侵害に該当する行為の具体例」を示すなど、読者の実際の利活用に配慮したものとなっている。
第2章の上記(2)ライセンス契約の基礎知識では、許諾スキームの例や各プレイヤーの説明を踏まえ、書面で明確に規定すべき一例として「権利範囲」「独占 / 非独占」「権利行使可能地域」「ロイヤリティ」「品質管理のプロセス」「契約解除の条件」「準拠法と紛争解決」のそれぞれにつき、これらの具体的な内容を解説した。
第3章「海外展開事例」は本事例集の中核といえる手厚さとなっており、全体で24頁建てとなる本章中に10の事例を紹介。ジャンルを①キャラクター(2事例)、②アニメ(2事例)、③マンガ、④ゲーム(2事例)、⑤ドラマ・実写映画、⑥個人クリエイター(2事例)と取りそろえた。
たとえば、ゲームの2事例目では「株式会社バンダイナムコエンターテインメント」の作品名「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」について(a)展開実績、(b)海外展開の状況・成果を掲げたうえで、(c)海外展開における課題と施策・対応に関して実務的見地から述べる。
(c)では、まず(i)権利許諾について「ゲーム化における権利元への確認」を挙げ、この際の留意事項などを、また(ii)権利の観点以外での工夫として「開発規模や規制を踏まえた海外同時展開の検討」「長く愛されるゲームを目指したファン目線でのプロモーション」について触れ、同社・同作品におけるポイントを明かしている。
本事例集の最終章となる第4章「海外展開に係る支援メニュー」では、キャラクターブランド・ライセンス協会(CBLA)や日本書籍出版協会(JBPA)、映像産業振興機構(VIPO)、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)などの各業界団体が実施している支援メニューやイベントを一覧表形式で収載。本事例集全体にわたって実践的な内容となるよう編まれており、関係者におかれては是非参考とされたい。