SH3976 経済産業省・公正取引委員会、「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」を策定 金子涼一(2022/04/19)

取引法務営業秘密・機密情報管理競争法(独禁法)・下請法

経済産業省・公正取引委員会、「スタートアップとの事業連携及び
スタートアップへの出資に関する指針」を策定

アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業

弁護士 金 子 涼 一

 

1 はじめに

 2022年3月31日、経済産業省と公正取引委員会とが共同で策定した「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(以下「本指針」という。)が公表された[1]

 スタートアップと大企業との連携において大企業に偏った契約実態が存在するとの指摘があったところ、公正取引委員会によるスタートアップの取引慣行に関する実態調査も踏まえて策定された「スタートアップとの事業連携に関する指針」(2021年3月29日公表。以下「事業連携指針」という。)において、「スタートアップと連携事業者の連携を通じ、知財等から生み出される事業価値の総和を最大化すること」といったオープンイノベーション促進の基本的な考え方が示されたことは記憶に新しい。その後、上記実態調査でも指摘されていたスタートアップに対する出資にかかる取引慣行の問題事例について、スタートアップと出資者との契約の適正化を目的として事業連携指針を改正する、本指針の原案が意見募集に付された。

 本指針は、スタートアップへの出資の増加と出資者の多様化が進む中での、スタートアップとの事業連携やスタートアップへの出資を通じたイノベーションの成功のため、スタートアップと連携事業者や出資者[2]との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを意図している。特に、今回の改正は、スタートアップと出資者との間の取引や契約に関する問題事例等について、あらたに、問題の背景、独占禁止法および競争政策上の考え方と解決の方向性を整理するものである。

 なお、本指針は、意見募集手続において提出された意見等を踏まえて若干の変更がされたものの、基本的に意見募集に付された原案の内容で最終的に策定された。そこで、本稿では、本指針の詳細については割愛し[3]、本指針の問題意識や意見募集において提出された意見とこれに対する回答を踏まえつつ、スタートアップへの出資およびスタートアップとの事業連携の今後の実務について考えてみたい。

(出典:「概要資料」https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220331010/20220331010.html

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(かねこ・りょういち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。東京大学法学部・同法科大学院卒業、カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール修了(LL.M., Business Law Certificate)。国内・クロスボーダーのM&Aを中心に企業法務全般に幅広い知見を有する。スタートアップの投資・事業提携や法務相談に豊富な経験があり、スタートアップ関連の執筆やセミナーも精力的に行う。

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