SH4003 令和3年改正著作権法(図書館関係)の概要 井上乾介/鈴川大路(2022/05/24)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

令和3年改正著作権法(図書館関係)の概要

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

弁護士 井 上 乾 介

弁護士 鈴 川 大 路

 

1 はじめに

 令和3年5月26日に①放送番組のインターネット同時配信等にかかる権利処理の円滑化および②図書館関係の権利制限規定の見直しを柱とする改正著作権法(以下「法」という。)が成立し、同年6月2日に公布された(以下「本改正」という。)。そして、令和4年4月27日に上記②の細則を定める「著作権法施行令の一部を改正する政令」が政令第185号として公布された[1]

 そして、②の具体化として、文化庁と国立国会図書館が共催した「国立国会図書館による入手困難資料の個人送信に関する関係者協議会」の協議・準備の下、令和4年5月19日に、国立国会図書館の個人向けデジタル化資料送信サービスが開始された[2]

 本記事では、上記サービスを含む令和3年改正著作権法の図書館関係規定の全体について解説する[3]

 

2 令和3年改正著作権法(図書館関係)の概要

 ⑴ 改正の趣旨

 改正前の図書館関係の権利制限規定については、かねてから「現代のインターネットを通じた図書館資料へのアクセスへのニーズに対応できていない」との指摘がなされていた。そして、今般の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う図書館の休館により、インターネットを通じた図書館資料へのアクセス等についてのニーズがより顕在化した。こうした状況を踏まえ、民間事業者による電子出版関連ビジネスを阻害しないように配慮しつつ、デジタル・ネットワーク技術を活用して国民の情報アクセスの充実等を図る目的で、本改正がなされた。

 ⑵ 改正の概要

 ア はじめに

 本改正では、以下の2点について、利用者のアクセスを向上させるための規定の調整が行われた[4]

 

 イ 国立国会図書館による絶版等資料[5]のインターネット送信[6]

文化庁:著作権法の一部を改正する法律(説明資料)前掲注[4]・2頁を一部改変

 

  1.   a「絶版等資料」の定義・運用
  2.    前提として、対象となる「絶版等資料」の定義・運用は以下の通りである[7]

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(すずかわ・だいち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2017年京都大学法学部卒業。2019年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、著作権法、不正競争防止法等の知的財産法分野や商事関係訴訟・紛争等の法律問題を取り扱っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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