SH4010 「デジタル社会における不正競争防止法の将来課題に関する中間整理報告」、「秘密情報の保護ハンドブック」および「限定提供データに関する指針」の改訂 後藤未来/小松侑太(2022/05/31)

取引法務営業秘密・機密情報管理

「デジタル社会における不正競争防止法の将来課題に関する中間整理報告」、
「秘密情報の保護ハンドブック」および「限定提供データに関する指針」の改訂

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 小 松 侑 太

 

1 はじめに

 ブロックチェーンやAI・IoT技術を始めとするデジタル・ネットワーク技術の更なる進化、それらのビジネスへの浸透に伴い、今後も、企業活動における情報資産の重要性が増大していくことが予想される。

 こうした情報資産のわが国での法的保護の枠組みとしては、契約によるものを除けば、不正競争防止法(以下「不競法」という。)、特許法・著作権法・不法行為法(民法)が主なものである。このうち、不競法に関しては、「営業秘密」による保護に加えて、平成30年法改正(令和元年7月1日施行)により「限定提供データ」(不競法2条7項)の制度が新たに導入された。また、これら法的保護の対象となるか否かにかかわらず、企業の事業活動に有用な情報が企業内で秘密のまま保持されることは、(その情報が不競法上の営業秘密として法的に保護されない場合であっても)当該企業の競争力を維持・向上させるのに資するものである。

 このような背景の下で、令和4年5月17日、経済産業省は、「秘密情報の保護ハンドブック」および「限定提供データに関する指針」の各改訂版、および「デジタル社会における不正競争防止法の将来課題に関する中間整理報告」を公表した。本稿では、これらの内容を概観する。

 

2 「秘密情報の保護ハンドブック」および「限定提供データに関する指針」の改訂版

 令和4年5月17日付けで公表された改訂版は、先行して令和4年3月23日に公表された改訂案をベースに、その間に実施されたパブリックコメントの結果も踏まえてアップデートしたものとなっている。

 もっとも、改訂版の内容としては、令和4年3月23日付けの改訂案から実質的な変更はなされていないようである。その内容については、改定案について概説した拙稿[1]を参照されたい。

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(ごとう・みき)

弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。弁護士・ニューヨーク州弁護士。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。京都大学理学部卒業・東京大学大学院工学系研究科修了・神戸大学法科大学院修了・スタンフォード大学ロースクール卒業(LL.M.)。特許・営業秘密等の知的財産やシステム開発・製造物責任等の技術関連の紛争処理、データ・インターネット関連案件を得意とする。

 

(こまつ・ゆうた)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2012年東京大学工学部卒業。2014年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修了。2017年東京大学法科大学院修了。2018年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主な取扱い分野は、知的財産法。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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