◇SH4019◇東証、改訂CGコードの追加事項に関する「上場会社の対応状況」を取りまとめ――フォローアップ会議で提示・報告、改訂後の状況、市場区分見直し前後の推移などが明らかに (2022/06/08)

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東証、改訂CGコードの追加事項に関する「上場会社の対応状況」を
取りまとめ
――フォローアップ会議で提示・報告、改訂後の状況、市場区分見直し前後の推移などが明らかに――

 

 東京証券取引所は「改訂コーポレートガバナンス・コードに新たに盛り込まれた事項に関する上場会社の対応状況」を取りまとめ、5月16日に開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」第27回会合で提示した。本会合の議事録が5月27日、金融庁ウェブサイトで公開され、上記「上場会社の対応状況」に関する東証の説明を確認することができる。

 東証では4月4日、従前の4つの市場区分「市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード・グロース)」を新たに3つの市場区分「プライム市場・スタンダード市場・グロース市場」へと移行する新市場区分を始動。東証によると、旧市場区分による4月3日現在の市場第一部上場会社2,177社のうち1,839社(84.5%)が新市場区分による4月4日現在のプライム市場上場会社となった。

 プライム市場は、そのコンセプトとして「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」を掲げる。ガバナンスの水準としては「コーポレートガバナンス・コード(一段高い水準の内容を含む)全原則の適用」が求められており、2021年6月11日に正式決定された改訂コーポレートガバナンス・コード上、プライム市場上場会社に対しては、たとえば「独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべき(原則4-8)」こと、指名委員会・報酬委員会の「各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本(補充原則4-10①)」とすること、「開示書類のうち必要とされる情報について、 英語での開示・提供を行うべき(補充原則3-1②)」ことなど、一段高く加重された水準が規定されている。

 今般の「上場会社の対応状況」においては、まず改訂コードにおける「主な追加事項」を一覧形式で、また追加事項によっては「プライム市場向け」であることを示して掲げつつ、主な改訂項目への対応状況について、改訂項目ごと(A)見直し前後の市場区分により「市場第一部とプライム市場との対比」によって、あるいは(B)コード改訂後「2021年12月末時点のTOPIX100構成銘柄の状況」として、さらには(C)コード改訂後「2021年12月末時点の市場選択による市場区分」などに基づき、把握できるように取りまとめられた。

 うち上記(A)および(C)の観点を始めとし、新市場区分始動直後といえる現段階でのプライム市場の現状が把握できる取りまとめをみると、本「上場会社の対応状況」中の【原則4-8】プライム市場上場会社の独立社外取締役比率(「上場会社の対応状況」2頁参照。以下同様)、【補充原則4-10①】指名委員会・報酬委員会設置状況(3頁)、(ご参考) TCFD賛同上場会社の動向(7頁)、【補充原則3-1②】英文開示の実施状況(8頁)、(ご参考) 市場区分別の英文開示実施率(9頁)、【補充原則1-2-④】議決権の電子行使の状況(10頁)が該当することになる。

 たとえば、【原則4-8】プライム市場上場会社の独立社外取締役比率(2頁)によると、独立社外取締役を3分の1以上選任している会社の比率は2021年の市場第一部上場会社:72.8%であったところ、プライム市場上場会社:81.6%(2022年4月14日時点のガバナンス報告書データを集計したものとされる。【補充原則4-10①】について同様)と、8割を超える比率にまで高まったことが分かる。

 また、【補充原則4-10①】指名委員会・報酬委員会設置状況(3頁)によれば、法定または任意で指名委員会・報酬委員会を設置している会社の比率について(ア)指名委員会を設置している上場会社の比率は2021年の市場第一部上場会社:66.3%であったところ、プライム市場上場会社:79.8%、(イ)報酬委員会を設置している上場会社の比率は2021年の市場第一部上場会社:70.3%であったところ、プライム市場上場会社:82.0%となり、それぞれ10ポイント以上の増加を示して8割水準となった。

 【補充原則3-1②】英文開示の実施状況(8頁)および (ご参考) 市場区分別の英文開示実施率(9頁)によっては、プライム市場選択会社における(i)2021年12月末時点または(ii)今後方針を含む状況が判明。実施会社の比率は2021年12月末の全市場:52.8%であったところ、(i)プライム市場:85.8%となっており、(ii)「開始予定」を含めると88.9%にのぼる。プライム市場選択会社の開示資料別の実施率は2021年12月末において①決算短信:67.8%、②株主総会招集通知および参考書類:64.2%、③IR説明会資料:57.6%などとなるところ、「開示予定」を含めた場合の実施率は①決算短信:73.3%、②株主総会招集通知および参考書類:71.4%、③IR説明会資料:59.6%と増加する見込みとなっている。

 東証では本「上場会社の対応状況」について、フォローアップ会議の席上「このガバナンス改革に関しましては、形式的な対応よりも実効性の面が重要と承知をして」おり、「必ずしも概括的な状況を示す数字の高低がガバナンスのよしあしを直接的に表すわけではないので、あくまで参考として」示したものとするところであるが、近時の状況・推移を把握可能とする「客観データ」がカラー図表を用いて端的にまとめられている点、関係者におかれては今後想定されるアップデートとともに是非参考とされたい。

 

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