経産省、「『攻めの経営』を促す役員報酬―企業の持続的成 長のためのインセンティブプラン導入の手引―」を改訂
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 齋 藤 宏 一
弁護士 早 瀨 孝 広
弁護士 吉 本 郷
1 はじめに
経済産業省は、2021年6月7日、『「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~』(「本手引」)の改訂版を9か月ぶりに公表した。本手引は、中長期の企業価値向上に対応する役員報酬制度の導入を促すことを目的として公表されており、今回の改訂は、2021年3月に施行された改正会社法(「改正会社法」)の内容を反映したものとなっている。
以下では、改訂内容について概観することとする。
2 株式報酬に関するQ&Aの改訂
⑴ 株式の無償発行が認められたことに伴う見直し
改正会社法では、上場会社の取締役または執行役に対する報酬等として株式の発行等を行う場合に限り、金銭の払込み等を要しないものとすることができるとされた(改正会社法202条の2)。新株予約権についても、権利行使時において金銭の払込み等を要せずに取締役または執行役に対して株式の発行等を行うことができるようになった(改正会社法236条3項、4項)。これにより、上場会社では、取締役および執行役に対して、金銭の払込み等を要することなく、いわゆる無償発行の方法によって株式を発行することが可能となった。
今回の改訂では、以下のとおり、無償発行の方法による株式の発行等に関して留意すべき点が追加されている。
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(さいとう・こういち)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第一東京)。2008年ハーバード・ロースクール(LLM)修了、2008-2009年ハーバード・ロースクール客員研究員。2009年ニューヨーク州弁護士登録。インセンティブ(株式)報酬制度(特にグローバルベースのもの)の設計・導入・運用に関連する数多くの企業からの相談に対応している。
(はやせ・たかひろ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2009年早稲田大学大学院法務研究科修了。2010年弁護士登録(第二東京)。2017年ハーバード・ロースクール(LLM)修了、2017-2018年米国Pillsbury Winthrop Shaw Pittman法律事務所(ロサンゼルス)勤務。2018年ニューヨーク州弁護士登録。グローバルインセンティブ報酬の導入・運用等を含むコーポレート案件を中心に取り扱う。
(よしもと・ごう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2017年慶應義塾大学法学部卒業。2018年東京大学法科大学院中退。2019年弁護士登録(第一東京)。インセンティブ報酬の導入・運用等を含む一般企業法務などを取り扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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