SH4040 公取委、令和3年度の企業結合関係届出の状況および主要な企業結合事例を公表――新たに「デジタル分野への対応」など添付、エンフォースメントの強化を巡っては別途ステートメントも (2022/06/29)

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公取委、令和3年度の企業結合関係届出の状況および主要な企業結合事例を公表
――新たに「デジタル分野への対応」など添付、エンフォースメントの強化を巡っては別途ステートメントも――

 

 公正取引委員会は6月22日、「令和3年度における企業結合関係届出の状況」および「令和3年度における主要な企業結合事例について」を公表した。

 (A)「令和3年度における企業結合関係届出の状況」(以下「届出の状況」という)においては昨年と同様、本資料末尾に企業結合審査の流れと基本的な考え方を解説する「企業結合審査について」を参考資料として提供しているところ、今次「届出の状況」ではこれを「参考1」とし、新たに「参考2」として「最近におけるデジタル分野の企業結合審査への対応について」を織り込んだ。加えて、当該資料につき「参考2の別添」という位置付けで「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」を添えている(なお、後述するように公取委は6月16日付で「デジタル化等社会経済の変化に対応した競争政策の積極的な推進に向けて―アドボカシーとエンフォースメントの連携・強化―」を公表)。また「参考3」として「令和3年度において第2次審査で終了した案件及び第2次審査終了前に取下げがあった案件の審査の経緯等」を収載した。

 (B)「令和3年度における主要な企業結合事例について」では、例年と同じように10事例を取り上げている。事例1として掲げられる「日本製鉄㈱による東京製綱㈱の株式取得」を始めとし、米国に本社を置く両当事会社グループの株式取得・合併による統合計画に対して豪州競争・消費者委員会および米国司法省との間で情報交換を行いつつ進められた審査の経過を細部にわたり再現する「セールスフォース・ドットコム・インク及びスラック・テクノロジーズ・インクの統合」(事例6)などが収められており、適宜参考とされたい。

 今般公表された上記(A)届出の状況によると、令和3年度において届出を受理した件数は337件(2年度:266件、元年度:310件)で、内訳をみると、株式取得に係る届出が288件(2年度:223件、元年度:264件)、合併に係る届出が10件(2年度:16件、元年度:12件)、分割に係る届出が17件(2年度:7件、元年度:12件)、共同株式移転に係る届出が3件(2年度:0件、元年度:3件)、事業譲受け等に係る届出が19件(2年度:20件、元年度:19件)となっている。

 令和3年度における届出受理337件(2年度:266件、元年度:310件)のうち(ア)「第1次審査の結果、独占禁止法上問題がないとして、排除措置命令を行わない旨の通知をしたもの」は328件・97.3%(2年度:258件・97.0%、元年度:300件・96.8%)、(イ)「より詳細な審査が必要であるとして、第2次審査に移行したもの」は1件(2年度:1件、元年度:1件)、 (ウ)「第1次審査中に取下げがあったもの」は8件(2年度:7件、元年度:9件)であった。

 また、当年度に審査を終了した案件中、当事会社が申し出た措置を前提として独占禁止法上の問題はないと判断したものは3件(2年度:6件、元年度:4件)、デジタル分野に関するものを含め届出を要しない企業結合計画に関するもの(当事会社からの相談があったものまたは公正取引委員会が審査を開始したもの)は14件(2年度:9件、元年度:6件)とされる。

 デジタル分野の企業結合審査に関しては、前掲「最近におけるデジタル分野の企業結合審査への対応について」(編注・上記(A)届出の状況「参考2」資料)により「1 企業結合ガイドライン及び手続対応方針の改定」「2 企業結合審査に係るエンフォースメント(執行)の強化」「3 個別案件における企業結合審査の内容に係る公表」に関する概括的・補足的な説明を行っている。

 実務的に注目される上記「2 企業結合審査に係るエンフォースメント(執行)の強化」を巡っては、説明の構成を「(1) 体制の強化」「(2) エンフォースメントの強化」としたうえで、当該(2)につきさらに「ア 個別案件に係る情報・意見の募集」「イ 企業結合審査における内部文書の活用」「ウ 経済分析の活用」と近時の対応を記載。デジタル分野におけるこのような「エンフォースメントの強化」に絡み、公取委は6月16日付で「デジタル化等社会経済の変化に対応した競争政策の積極的な推進に向けて―アドボカシーとエンフォースメントの連携・強化―」と題するステートメントを公表したところであり、一読を要する。

 また、上記「イ 企業結合審査における内部文書の活用」に関して「公正取引委員会が内部文書の提出を求める場合の実務がどのようなものであるか」を説明する文書が前掲「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」(編注・上記(A)届出の状況「参考2の別添」資料)に該当する。本資料では、たとえば「2 提出を求める内部文書の範囲」として「企業結合に関連する当事会社グループの取締役会等の各種会議等で使用された資料や議事録等」「当事会社グループが、企業結合の検討及び決定に当たり企業結合の目的・効果等について検討・分析した資料や企業結合の検討を開始した経緯を示す資料」「企業結合の検討に関与した当事会社グループの役員又は従業員の電子メール (企業結合に関するもの)」など計7点を例示列挙するほか、提出方法の仔細についても明記を図っている。

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