経産省、第1回「スタートアップ・ファイナンス研究会」開催
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 佐 橋 雄 介
弁護士 福 山 和 貴
1 はじめに
スタートアップの創出・育成に向けて2022年11月に政府により策定された「スタートアップ育成5か年計画」[1](以下「5か年計画」という。)において掲げられた目標のうち、とりわけ、資金面について、上場段階も含めたスタートアップのファイナンス・エコシステムのあり方を議論することが重要であることから、2023年11月1日、「スタートアップ・ファイナンス研究会」(以下「本研究会」という。)が設置され、スタートアップのファイナンス環境にかかる課題と今後取り組むべき施策について検討を行うこととされた[2]。
本稿では、本研究会で取り上げられた議題のうち、本研究会設置の背景および未上場株式市場の論点について紹介する。
2 本研究会の概要
⑴ 本研究会の背景・問題意識
本研究会は5か年計画に端を発するものである。5か年計画とは、5年後(2027年度)にスタートアップへの投資額を10兆円規模にすること等を目標に掲げ、①人材・ネットワークの構築、②資金供給の強化と出口戦略の多様化、③オープンイノベーション推進の3つの観点から取組みを進めることで、スタートアップ・エコシステムを強化する政策であり、将来においてはユニコーンを100社、スタートアップを10万社創出することにより、わが国が世界有数のスタートアップの集積地となることを目指すものである。
出典:「スタートアップ・ファイナンス研究会(事務局説明資料)」
(経済産業省経済産業政策局産業資金課、2023年11月1日)[3]4頁
また、リスクを取って投資を行う資金供給者/資金仲介者側と、その投資を元手に事業成長を実現する事業者側との間で、リスクマネーが循環していくなかで、スタートアップは、ハイリスク・ハイリターンかつ成長カーブが多種多様で、エクイティを軸とした直接金融型のファイナンス戦略が取られやすい傾向にある。本研究会では、産業政策としても重要であるスタートアップを中心としたファイナンス・エコシステム、つまりリスクマネーが循環し、スタートアップを取り巻くファイナンス環境の拡大成長に焦点を当てて議論を行うこととしている。リスクマネー循環の全体像は以下の図のとおりである。
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(さはし・ゆうすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年弁護士登録。2015年University of Southern California(LLM)修了。2015-2016年フランスのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。2016年ニューヨーク州弁護士登録。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。主に国内外の企業買収、組織再編、ジョイントベンチャー等のM&A案件や一般企業法務、商取引等のコーポレート案件を取り扱っている。
(ふくやま・かずき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。一橋大学法学部・一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
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