SH4047 タイ:個人情報保護法――①全面施行にあたってのチェックポイントと②下位規則の制定状況を踏まえた今後の注意点(1) 箕輪俊介(2022/07/06)

取引法務個人情報保護法

タイ:個人情報保護法
――①全面施行にあたってのチェックポイントと②下位規則の制定状況を踏まえた今後の注意点(1)――

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 箕 輪 俊 介

 

 2020年から全面施行が予定されていながら二度に渡り施行が延期されていたタイの個人情報保護法が、2022年6月1日に漸く全面的に施行された。実務的にどのような対応が必要かについては、佐々木弁護士及び中弁護士が行ったウェビナーでも詳細を解説しているため、同ウェビナーも併せて視聴されたいが、本稿では、全面施行を迎えるにあたっておさえておくべき事項について、ポイントを絞って紹介をしたい。

 

1 全面施行にあたってのチェックポイント

✓ STEP1:個人情報の取得ルート・利活用の方法を把握しているか

 まず、どのような対応を行う必要があるかを把握するために、現状、どのような個人情報を取得しており、どのような形で利活用をしているのかを把握する必要がある。いわゆる、データマッピングといわれる作業である。

 

 どのような個人情報を取得しており、今後も継続してどのような個人情報を取得しうるかを把握するために、以下の観点から整理することが有用と考える。

 

情報主体 事業者が保有する主たる個人情報は、(1)従業員、(2)取引先・顧客、(3)仕入先・ベンダー(顧客や仕入先が法人である場合はその関係者・担当者)に関連するものである。 したがって、まずは保有する個人情報をこの3つに大別し、整理することが有用である。
取得方法 タイの個人情報保護法は、個人情報の収集にあたり、個人情報を保有する主体(情報主体)に対して、利用目的の通知を行い、収集にあたっての同意を取得することが原則として求められる。 したがって、このような通知や同意の取得といった対応を直接情報主体に対して行いうるかを把握するために、取得した個人情報は、直接情報主体より取得したものなのか、第三者を通じて間接的に取得したものなのかを整理しておくべきといえる。
種類 タイの個人情報保護法上、個人情報がセンシティブデータか否かで要求される対応が異なりうる。したがって、どのような個人情報を取得したのかを整理しておくべきといえる。
取得・保管部署 個人情報を取得・保管する際に適切な手続を踏んでいるかを把握するために、個人情報を取得し、保管する部署を特定しておくべきといえる。
 

 

 次に、どのように個人情報を利活用しているかについては、以下の観点から整理をすることが有用と考える。

 

利用目的・方法 利用目的・方法により、個人情報収集時に行う利用目的の通知の内容が異なりうるため、個人情報毎の利用目的・方法は確認しておくべきである。
域外移転の有無 タイ国外へ個人情報を移転させるにあたっては法令上特定の手続を経ることが原則として求められているため、域外移転の有無は確認する必要がある。
第三者への提供の有無 第三者への提供の有無は、個人情報収集時に行う利用目的の通知の内容に影響する。また、記帳代行業者等に個人情報を提供する場合には、所定の手続を経ることが原則として求められている。これらの観点から個人情報の第三者への提供の有無は確認する必要がある。
保存期間 法令上、個人情報の保存期間は把握していることが求められているため、現状の保存期間の運用は確認しておく必要がある。
 

 

✓ STEP2:必要書類の整備は完了しているか

 上記のプロセスを経て、どのような対応をする必要があるかを検討することとなるが、まずは個人情報保護法を遵守するにあたって必要となる書面を整備するべきである。一般的には、以下の書面を準備することが必要となる。

 

プライバシーポリシー

『個人情報収集時に個人情報の利用目的を通知する書面』

  1. ・ 情報主体毎に通知するべき内容が異なりうるので、従業員用や顧客用といった複数の様式を準備することが望ましい。
同意書

『個人情報収集時に情報主体より取得する同意に関する書面』

  1. ・ 情報主体毎に取得するべき同意の内容が異なりうるので、従業員用や顧客用といった複数の様式を準備することが望ましい。
  2. ・ 全面施行後に採用する従業員については、雇用契約を通じて同意を取得することも考えられる。
情報処理契約

『記帳代行を行う事業者等、情報処理者に分類される事業者との間で締結する契約』

  1. ・ 上述のとおり、情報処理者に分類される事業者に個人情報を提供する場合には、個人情報の保護に配慮した所定の手続を経ることが原則として求められており、その一環として所定の規定を設けた情報処理契約を締結することが求められている。
個人情報管理台帳

『事業者が保有する個人情報の記録を保管する台帳』

  1. ・ 個人情報を、個人情報の内容、情報主体、収集目的、保管期間、管理方法、管理場所等に基づいて整理した上で個人情報管理台帳を作成し、保存することが求められている。
  2. ・ 小規模事業者には一部適用除外が将来的に認められる可能性がある。
個人情報保護規程・マニュアル

『個人情報の取扱い・運用方法等の従業員向けの規程』

  1. ・ 就業規則に組み込む場合もあれば、独立した規則を制定する場合もある。
情報主体の権利行使に関する申請書

『情報主体が事業者に対して同意の撤回や個人情報の開示・修正・抹消等を申告・要求するにあたって使用する書面』

  1. ・ 個人情報保護法が全面施行される前に取得した個人情報は、原則として情報主体が事業者の個人情報の収集に同意したものとみなされる。そのため、そのような情報主体に対して同意を撤回できる機会を与えるために、同意の撤回方法については公示をすることが求められている。
 

 

(2)につづく


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(みのわ・しゅんすけ)

2005年東京大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科(法科大学院・司法試験合格により)退学。2014 年Duke University School of Law 卒業(LL.M.)、2014 年Ashurst LLP(ロンドン)勤務を経て、2014 年より長島・大野・常松法律事務所バンコク・オフィス勤務。

バンコク赴任前は、中国を中心としたアジア諸国への日本企業の進出支援、並びに、金融法務、銀行法務及び不動産取引を中心に国内外の企業法務全般に従事。現在は、タイ及びその周辺国への日本企業の進出、並びに、在タイ日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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