東証、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の初会合を開催
――発言者名を含めた議事録を公開、いわゆる経過措置問題も審議――
東京証券取引所は7月29日、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の初会合を開催した。
3つの新市場への区分見直しを4月4日付で行ったのち、東証において4月26日、その設置を発表していたもので、同日公表された設置要綱によると「市場区分見直しの実効性向上に向けて、施策の進捗状況や投資家の評価などを継続的にフォローアップ」し、「上場会社の企業価値向上に向けた取組や経過措置の取扱い、ベンチャー企業への資金供給などに関する追加的な対応について東京証券取引所に対して助言を行う」ことを目的とする。
メンバーについては「エコノミスト、投資家、上場会社、学識経験者その他の市場関係者をもって構成する」とされていたところ、大学院教授2名を始めとし、上場会社・シンクタンク・機関投資家などの関係者ら総勢9名が就任した(オブザーバー:金融庁・経済産業省、事務局:東証)。今般の市場区分見直しに関する初期の検討を行った東証・市場構造の在り方等に関する懇談会(2018年10月29日設置発表、座長:神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授。座長を含めて6名)の委員とは3名が、関係各界の有識者から提言を得ることとした金融審議会・市場構造専門グループ(2019年5月13日設置発表、座長:神田秀樹教授。座長を含めて8名)のメンバーとは3名が同一となっている。
初回開催となった7月29日会合の事務局資料においては「本日ご議論いただきたい事項」とし、総論として「本会議におけるフォローアップの内容や方法、見直しの実効性を確保していくための取組等についてどう考えるか」を掲げるとともに、各論としては(1)プライム市場、(2)スタンダード市場、(3)グロース市場の新3市場について、それぞれ「どのような観点からフォローアップを行うことが考えられるか」を、また(4)上場維持基準に適合していない約500社につき「当分の間」とされている経過措置の期限などを巡り「経過措置の在り方について、どう考えるか」を挙げた。
当日の審議において公開の可否・方法を検討した結果、議事要旨でなく、かつ発言者が分かるかたちで公表することとされた議事録によれば、上記(4)については事務局から当日「ぜひ、制度としての在り方のほか、早く方向性を示していくべきかなど、時期・進め方などに関しても、ご意見をいただければと存じます」と補足。
メンバーからは、①「言うまでもなく、可能な限り、期間を早めに示すことが極めて重要」とする見解、②「経過措置がタイミング含めてしっかりと明確化されることによって、発行体としても真摯に取り組むようなこともあるのではないか」とする見解、③「予見可能性に非常に乏しいことは問題だと考えております。規律ある市場として貫徹しているかといった疑念に対して、しっかりと早くメッセージを出すことが非常に重要ではないか」とする見解、④「とにかく早く終わらせるべきで、或いはとにかく速やかに経過措置終了日を決めて明らかにすべき」とする見解がみられる。
上場会社側の適合に向けた計画との関係では、⑤「速やかにということもありますが、まず適合に向けた計画書の実効性を誰がどのように評価すべきかを明確にしたほうが良いのではないか」とする見解、⑥「上場維持基準の適合に向けた計画の期間の分布状況を見ると、どう見ても5年あたりが妥当なのではないか、少なくともそれより長くするのは妥当ではない」とする見解、⑦「プライム市場においては、経過措置が焦点だと考えます。上場維持基準の適合に向けた計画の期間は各社様々ですが、いったん企業が自らプライム市場に残りたいとして出した計画書は当初開示した期限までしか認めないとすべきだと考えます。(中略)長期化していく懸念がありますので、早めに更新は認めないと明確に示すべき」とする見解も示されている。より具体的に日程を想定するものとして、⑧「(編注・経過措置のソフトランディングとしての面に着目し)ひとつの考え方としては、一度にやるとハレーションが起きるので、二段階方式といいますか、一度中間目標をおく、例えば2025年に中間目標をおくということも考えられるのではないか」とする見解もみられるところである。
一部メンバーからの「本会議において、いつまでにどういうアウトプットを出すのか、大枠のお考えをお聞きできますでしょうか」といった質問に対し、事務局からは「何年後かに結果を出すということではなく、早めに出せるものは出してまいりたい」「できましたら、半年程度ディスカッションしたうえで、ある程度のものをまとめていくというイメージ」「一つの方向感に取りまとめるとなると制約が生まれてしまいますし、色々な論点がありますので、テーマによっては複数の意見があってもいい」と回答。テーマごとに一定の検討を経て、複数意見を併記することも前提としつつ、市場・上場会社に対しては可及的すみやかにアナウンスしていくことが見込まれる。