SH4116 経産省、責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)に対する意見募集 横井傑/秋野博香(2022/08/30)

サステナビリティ

経産省、責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のための
ガイドライン(案)に対する意見募集

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

弁護士 横 井   傑

弁護士 秋 野 博 香

 

1 はじめに

 経済産業省は、2022年8月8日、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」[1](以下「ガイドライン(案)」という。)を公表した。ガイドライン(案)は、日本で事業活動を行う企業の実態を踏まえ、サプライチェーンと人権における枠組みや論点を具体的かつ分かりやすく解説することを目的として作成されており、注目に値する。

 ガイドライン(案)は、本稿の執筆時点で、未だ同月29日までのパブリックコメント(「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」に対する意見募集[2])に付されている段階であるが、企業の実務担当者が人権尊重への取組みを進める場合に念頭に置いておくべき内容が多く含まれているため、以下ポイントを概説する。

 

2 ガイドライン(案)策定の経緯

 2011年の国連人権理事会において、「ビジネスと人権に関する指導原則」[3](以下「国連指導原則」という。)が支持され、人権の尊重は、すべての企業に期待されるグローバルな行動基準になっている。欧米では、すでに人権デュー・ディリジェンス(以下「人権DD」という。)の法制化が進んでおり、企業による人権尊重の取組みの強化が求められている。

 日本国内では、企業の人権尊重責任について未だ法的規制は導入されていないものの、国連指導原則を踏まえ、2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」[4]が策定・公表され、様々な取組みが進められている。しかしながら、企業の人権に関する取組状況調査(「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」集計結果[5])によれば、人権DDを実施している企業が回答企業の5割強にとどまるなど、日本企業の人権尊重の取組みには、なお改善の余地が認められ、また一部の企業からは、人権尊重について具体的な取組方法が分からないという声も寄せられた。

 このような状況を踏まえ、経済産業省は、サプライチェーンにおける人権尊重の取組みについて業種横断的なガイドラインの作成に着手し、今回のガイドライン(案)の公表に至った。

この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください


(よこい・すぐる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2005年慶大法学部卒業。2009年早大ロー修了。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2020年Georgetown Law(LL.M)修了。元AMT北京オフィス・上海オフィス代表。2021年より香港提携事務所Nakamura & Associates外国法登録弁護士。主な取扱分野は、中国・香港法務、経済安全保障・通商法務等。

 

(あきの・ひろか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年慶應義塾大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院中退。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

タイトルとURLをコピーしました