SH4132 倒産手続のIT化に関する法改正の議論状況の概観(前編)――「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案」の公表を受けて 荻野聡之/樋口政隆(2022/09/13)

取引法務倒産・事業再生

倒産手続のIT化に関する法改正の議論状況の概観(前編)
――「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案」の公表を受けて――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 荻 野 聡 之

弁護士 樋 口 政 隆

 

1 はじめに

 民事訴訟手続のIT化を主たる内容とする改正民事訴訟法(以下「民訴法」という。)が2022年5月25日に公布され、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、ウェブ会議による期日進行等の段階的なIT化が進められてきている。今般、民事執行、民事保全、倒産手続、非訟事件、民事調停、労働審判、人事訴訟、家事事件、子の返還申立事件の手続等についても、手続のIT化の議論が進められている[1]

 倒産手続については、多数の利害関係人の権利義務関係を公平・平等かつ効率的に調整する要請が高く、一定の書式に従った多数の書類の提出が求められるという特殊性からIT化に親和性が高いため、法制審議会における議論のほか、「家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等IT化研究会(商事法務)」や「倒産手続IT化研究会(事業再生研究機構)」における研究結果が公表されており[2]、現在も活発な議論が継続している状況である。

 2022年8月5日、法務省は「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」という。」)を取りまとめた。本稿は、同中間試案のうち、倒産法分野について概観しようとするものである。中間試案における提案内容は多岐にわたるため、本稿は前編と後編の2部構成で解説を加えることとする。

 

2 中間試案における検討内容の全体像

 中間試案において検討されている倒産手続のIT化に関する改正の全体像は、下記のとおりである。

破産手続 裁判所に対する(インターネットを用いてする)申立て等
提出された書面等および記録媒体の電子化
裁判書および調書等の電子化
期日におけるウェブ会議および電話会議の利用
電子化された事件記録の閲覧等
送達
公告
その他
民事再生、会社更生、特別清算および外国倒産処理手続の承認援助の手続

 倒産手続の基本ともいえる破産手続に関するIT化の規律を検討した上で、他の倒産手続(民事再生、会社更生、特別清算および外国倒産処理手続の承認援助の手続)に関しても同様の規律を導入することが適切か検討されている。

 本稿前編では、破産手続における「裁判書および調書等の電子化」の規律まで解説することとし、「期日におけるウェブ会議および電話会議の利用」の規律以降の解説については、本稿後編に譲ることとする。

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(おぎの・さとし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。破産管財人、民事再生手続申立代理人、私的整理における債務者代理人等多数。2019年度東京弁護士会倒産法部事務局(広報担当)。

 

(ひぐち・まさたか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2016年早稲田大学法学部卒業。2018年弁護士登録。倒産分野、労働分野を中心に担当し、M&Aの領域や証券発行の領域の案件等も幅広く担当している。大阪弁護士会 司法委員会 倒産手続IT化運用検討プロジェクトチーム委員としても活動している。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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*「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用。

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