消費者庁、「ステルスマーケティングに関する検討会」の初会合を開催
――景品表示法による規制の必要性・あり方を検討、「本年中結論」に向けて審議進む――
消費者庁は9月16日、「ステルスマーケティングに関する検討会」(座長・中川丈久神戸大学大学院法学研究科教授)の初会合を開催した。同月9日に開催趣旨などを発表していた。初会合後、翌週22日には事業者からのヒアリングを軸とする第2回会合を開催している。
マスメディア4媒体の広告市場規模を上回るなど拡大が著しいデジタル広告市場にあって「特に、SNS上で展開される広告については、その傾向が顕著となっている中で、広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿するなどのステルスマーケティングの問題がより一層顕在化している」とし、その対応について、消費者の自主的・合理的な選択を阻害するおそれがある行為を規制する景品表示法の観点から検討する。主な検討事項として(1)ステルスマーケティングに対する景品表示法による規制の必要性、(2)規制が必要である場合、具体的な規制のあり方――を挙げる。
消費者庁長官の委嘱による本検討会の委員は座長を始めとする大学院・大学の教授・准教授6名ほか弁護士、新経済連盟事務局、日本情報経済社会推進協会、全国消費生活相談員協会、WOMマーケティング協議会ら計11名で構成。消費者庁表示対策課が事務局を務める。
初会合時の事務局資料「ステルスマーケティングに関する実態調査」から景品表示法とステルスマーケティングとの関係をみると、(A)「表示に優良誤認がある場合、ステルスマーケティングによる表示に対しても景品表示法上の措置が可能」とされる一方、(B)「表示内容に優良誤認・有利誤認がない場合は、景品表示法において、ステルスマーケティングを規制することはできない」とされる。たとえば、広告主の依頼であるにもかかわらず「有名人が商品・サービスと一緒に取った写真を広告であると明示せずに宣伝すること」などは不当表示に当たらないとされ、ここに景品表示法による対応の限界が顕在化する。
また「事柄の性質上、ステルスマーケティングによる消費者の被害状況の把握が極めて困難」な特性があり、しかしながら「規制を検討するには消費者の被害状況を何らかの形で把握することが重要」となる。現状「OECD加盟国(名目GDP上位9か国)において、ステルスマーケティングに対する規制がないのは日本のみ」という。
なお、ステルスマーケティングの定義・類型に関する既存の「代表的なもの」として、次の3点の資料が紹介されており、参考とされたい。(ア)日本弁護士連合会「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」(2017年)、(イ)日本インタラクティブ広告協会(JIAA)編著『必携 インターネット広告 プロが押さえておきたい新常識』(インプレス、2019年)、(ウ)WOMマーケティング協議会「WOMJ ガイドライン FAQ」(2017年。編注・2022年9月2日付の追記がある)。事務局資料ではこれらに共通するステルスマーケティングの要素について、①「広告主(商品・サービスを供給する事業者)による広告宣伝」であって、②「消費者に対して広告主が明らかにされないもの」とまとめている。
9月22日の第2回会合では5事業者からのヒアリングを実施した。今後9月30日・10月6日とヒアリングをかさね、11月中旬に予定される第5回会合では論点整理など、12月ころに予定される第6回・第7回会合では報告書の取りまとめに向けた議論を行い「令和4年中を目途に一定の結論を得る」方針である。