産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会「外国公務員贈賄に関するワーキンググループ」第2回を開催
――外国公務員贈賄罪の公訴時効の在り方及び同罪の法人に対する適用管轄(国外犯処罰)を議論――
岩田合同法律事務所
弁護士 関 口 彰 正
1 はじめに
2022年9月14日、産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会は、外国公務員贈賄に関するワーキンググループ(以下「ワーキンググループ」という。)の第2回目を開催した。ワーキンググループでは、外国公務員贈賄罪(不正競争防止法(以下「不競法」という。)18条)の公訴時効の在り方及び同罪の法人に対する適用管轄(国外犯処罰)の在り方が協議された[1]。これは、OECDが、2019年、外国公務員贈賄防止条約の締約国間の相互審査として、日本に対して4回目の審査を実施し、同年7月に第4期対日審査報告書を公表しているところ[2]、当該報告書において、公訴時効及び外国公務員贈賄罪の法人に対する適用管轄について勧告されたことを踏まえたものである。以下では、外国公務員贈賄罪の公訴時効の在り方及び同罪の法人に対する適用管轄(国外犯処罰)について、ワーキンググループで検討された内容を解説する。
2 外国公務員贈賄罪の公訴時効の在り方について
不競法上、外国公務員贈賄罪の公訴時効は、法人に関しても自然人に関しても5年とされている[3]。この点について、OECDは、外国公務員贈賄罪の公訴時効期間を適当な期間に延長するために必要な措置をとること、又は同様の目的を達成するために捜査の間公訴時効を停止する手段を導入することを勧告した。OECDの問題意識としては、①被疑者が、国外にいる場合には時効の進行が停止されるが、捜査の開始や捜査共助要請の発出によっては時効の進行は停止しないこと、②日本における他の経済犯罪(有価証券報告書等の虚偽記載、横領罪、法人税法違反等)では時効期間が7年のものが多いこと、③第3期対日審査以降、10件の外国公務員贈賄事案で時効の制約によって捜査・訴追が妨げになったことが明らかになっていること、④法執行機関にとって正式の捜査開始の遅れ等も考えられるところ、時効の延長や捜査の間公訴時効を停止するといった措置を検討すべきではないか、⑤少なくとも1件の外国公務員贈賄事案で、時効の完成により法人が起訴されなかったことといった点にある。
ワーキンググループでは、他国における公訴時効期間や時効の中断・停止制度との比較や日本における他の経済犯罪に関する法人又は自然人についての刑事罰の比較が行われた。他国では、自然人について公訴時効期間が日本よりも長い国が18ヵ国中[4]15ヵ国、法人について公訴時効期間が日本よりも長い国は18ヵ国中6ヵ国あった。具体的には以下のとおりである。
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(せきぐち・あきまさ)
岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年慶應義塾大学法学部卒業。2015年弁護士登録。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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