SH4159 個人情報保護法改正と生命科学・医学系研究倫理指針 井上乾介/並木重伸(2022/10/12)

取引法務個人情報保護法

個人情報保護法改正と生命科学・医学系研究倫理指針

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

弁護士 井 上 乾 介

弁護士 並 木 重 伸

 

1 はじめに

 文部科学省、厚生労働省および経済産業省は、令和3年5月に「生命科学・医学系研究等における個人情報取扱い等に関する合同会議」(以下「合同会議」という。)[1]を設置し、生命科学・医学系研究にかかる倫理指針である「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下「倫理指針」という。)[2]について、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律57号)」(以下「個情法」という。)の令和2年・3年改正を踏まえた見直しを進め、令和4年3月に同指針を改正(同年4月から施行)した[3]。また、令和5年にも同指針の改正が予定されている[4]

 本稿では、個情法改正の概要および個情法と生命・医学系指針の関係について説明した上で、同指針の令和4年改正の内容および次回改正の方向性について説明し、実務上の示唆を検討する。

 

2 令和3年改正個人情報保護法の概要

 個情法は、令和2年に、個人情報にかかる個人の権利の拡大、漏えい時の事業者の報告・通知義務、仮名加工情報制度の創設等を内容とする改正[5]がなされた。

 さらに令和3年には、①個情法、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律58号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律59号)の三法を個情法に統合するほか、地方公共団体の機関・独立行政法人にも同法が直接適用、②医療分野・学術分野の規制を統一するために、国公立の病院、大学等での個人情報の取扱いについては原則として民間の病院、大学等と同じ規律が適用、③学術研究にかかる適用除外規定について、一律の適用除外から義務ごとの例外規定[6]として規律を精緻化する等の内容の改正[7]がなされた(図1参照)。

 

図1:令和3年改正個人情報保護法の全体像

※出典:合同会議第5回資料1
「令和3年改正個人情報保護法について~令和5年4月の完全施行に向けて~」[8]

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(なみき・しげのぶ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト(弁護士、ニューヨーク州弁護士、カリフォルニア州弁護士)。2012年東京大学法科大学院卒業。2020年カリフォルニア大学バークレー校ロースクール修了。個人情報・データ保護、紛争解決、知財、IT等を取り扱う。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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