SH4192 中国:改正中国独禁法の要点――どこが日本企業にとって重要か(4/4) 鹿はせる(2022/11/10)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

中国:改正中国独禁法の要点
どこが日本企業にとって重要か(4/4)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鹿   はせる

 

(承前)

⑴ 市場支配的地位の濫用規制に関する改正の要点
  1.   ① プラットフォーム規制の強化(8月1日から施行済み)
  2.    中国独禁法本文では、市場支配的地位の濫用規制について基本的に旧法の枠組みが維持されており、改正法による変更は、市場支配的地位の濫用行為の類型を定めた第22条に、「市場支配的地位を有する事業者がデータ、計算方法、テクノロジー及びプラットフォームルール等を用いて、前項に定める市場支配的地位の濫用行為を行ってはならない」(改正中国独禁法第22条第2項)と条項が一つ新設されたのみである。
  3.    同項の新設は明らかに近年のアリババ、テンセント等の中国の巨大IT企業に対する処罰強化を踏まえたものであり、その背景としては世界的な潮流として、GAFA等の巨大IT企業に対する競争当局の執行活動の厳格化と軌を一にする側面もあれば、中国独自の事情として、大手IT企業がアリババ及びテンセントを頂点に寡占化している現状への対応という側面もあり、安易に単純化できない。もっとも、少なくとも日系企業を含む外資企業は、外資規制の関係で、中国で市場支配的地位を有するほどのプラットフォーム事業者となる可能性は低く、むしろE-Commerceの勃興によってプラットフォームに対する依存度が高まっているため、規制強化を追い風として生かす道を探るべきであろう。
  4.  
  5.   ② 標準必須特許権者の権利行使規制の強化(下位法令[1]の成立待ち)
  6.    市場支配的地位の濫用規制に関し、日系企業の立場から注目すべき改正はむしろ、下位法令のうちの知的財産権の濫用により競争を排除・制限する行為に関する規定(「知財濫用禁止規定」)における、標準必須特許に関する以下の改正と思われる(下線部分が実質的追加)。

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(ろく・はせる)

長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2017年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2018年から2019年まで中国大手法律事務所の中倫法律事務所(北京)に駐在。M&A等のコーポレート業務、競争法業務の他、在中日系企業の企業法務全般及び中国企業の対日投資に関する法務サポートを行なっている。

 

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