◇SH1089◇ベトナム:投資法における条件付投資分野の改正(2) 澤山啓伍(2017/03/31)

未分類

ベトナム:投資法における条件付投資分野の改正(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 本稿は、2017年1月1日に施行された投資法第6条及び条件付投資分野のリストに関する別表4を改正する法律第03/2016/QH14号(以下、「改正法」という。)についての概説の2回目である。(第1回はこちら

2. 改正の内容

  1. ⑵ 自動車製造・組立・輸入に関する事業の条件
  2.   前回説明した条件付投資分野の変更のうち、特に、自動車の製造・組立・輸入に関する事業が条件付投資分野に加えられたという点は、日系企業にとっては影響が懸念されるところである。法案の策定過程においては、この点について様々な議論がされていた。自動車部品の製造を行う中小企業に対する悪影響についての懸念も示されていたが、近年ベトナムでは特に大都市圏で自動車の増加が顕著であり、交通渋滞を引き起こしていることに対する対策として、自動車の製造・組立・輸入に対して政府によるコントロールをより強化することが必要との判断がなされたものと考えられる。
  3.   自動車の製造・組立・輸入に対して、実際にどのような条件が課されるかについては、まだ詳細を定める下位規範が公布されておらず、不明である。本法改正の施行日は2017年1月1日であるが、自動車の製造・組立・輸入、及び録音・録画・測位に関する偽装施設・ソフトウェアに関する事業の条件付投資分野への追加については、特別に2017年7月1日から効力を発するものとされている。したがって、この時点までには、具体的な条件、及び法改正以前に既に同事業を行っている企業に対する経過措置の内容が明らかになるものと期待される。
     
  4. ⑶ 禁止分野への追加
  5.   なお、改正法では、麻薬に関する事業、売春事業、人身売買、人の無性生殖に関する事業などが含まれる禁止事業分野に、「爆竹の事業」が加えられた。
  6.   ベトナムでは、社会・秩序の安全及び騒音の軽減のため、爆竹の製造、販売、使用は既に1994年から禁止されていた。しかし、伝統的に、旧正月などの祭礼の際に爆竹を使用する風習があり、実際にはその禁止は徹底されてこなかった。実際、2017年の旧正月にも、新年を祝うための爆竹が原因で入院した患者数はベトナム全土で150人近くに上るとの報道もあった。今般、法律に爆竹に関する事業一切が禁止されることを明記したことは、爆竹の製造及び使用の禁止を徹底したいという意向の現れであるとされている。

 

タイトルとURLをコピーしました