タイ:民商法の会社法制に関する改正(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 中 翔 平
はじめに
2022年9月14日に民商法の会社法制に関する改正法(以下「本改正法」という。)が成立した[1]。本改正法は、2023年2月7日に施行される。本稿では、本改正法のうち実務上重要と考えられる事項につき、その概要と留意点を概説する。
1 最低株主数の変更
現行の民商法では、非公開会社の設立には、3名以上の発起人(個人であることを要する。)が必要であり、また、会社設立後、株主数が3名未満になることが非公開会社の解散事由となっている。本改正法では、非公開会社の設立の際の発起人の最低人数が2名となり、これに合わせて、非公開会社の解散事由も株主数が1名になった場合とする改正がなされた。現行の民商法下では、日系企業がタイに現地法人を設立する際には、タイの合弁パートナーに加えて、現地法人の役員らに1株の株式を保有させるアレンジが通常であったが、本改正法の下では、そのようなアレンジは不要となる[2]。また、実務上、タイの現地法人の買収案件では、買主の要望に応じて、クロージング時に売主が1株保有株主からその保有する株式を一次的に買い取る、又は、1株保有株主が買主の指名する譲受人に対して直接株式を売却するといったアレンジを行う必要があり、株式売買契約においてもその内容を規定することが通常であったが、本改正法の施行後は、1株保有株主が不要となり、このような対応を省略することが可能となる。
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(なか・しょうへい)
2013年に長島・大野・常松法律事務所に入所。プロジェクトファイナンス、不動産取引、 金融レギュレーション及び個人情報保護の分野を中心に国内外の案件に従事。2020年5月 にUniversity of California, Los Angeles School of Lawを卒業後、2020年12月より当事務所 バンコク・オフィスに勤務。現在は、主に、在タイ日系企業の一般企業法務及びM&Aのサ ポートを中心に幅広く法律業務に従事している。
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