SH4275 米国連邦取引委員会が児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)違反等に基づき、総額671億円の制裁を課した事例 井上乾介/伊藤雄太(2023/01/17)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

米国連邦取引委員会が児童オンラインプライバシー保護法
(COPPA)違反等に基づき、総額671億円の制裁を課した事例

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 伊 藤 雄 太

 

1 はじめに

 米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission、以下「FTC」という。)は2022年12月19日に、Fortnite(フォートナイト)を運営するEpic Games. Inc(以下「Epic」という。)に対し、児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act、以下「COPPA」という。)[1]および連邦取引委員会法(以下「FTC法」という。)違反に基づき、総額5億2000万ドル(約671億3200万円)の制裁金を課したと発表した[2]

 Fortnite[3]は、Epicが2017年より販売・配信するオンラインゲームであり、米国のみならず世界中で人気を博しており、2021年6月22日時点でアカウント数が5億を超える世界最大規模のオンラインゲームである[4]

(出典:Epic Games 公式ウェブサイト[5]

 

 本稿では、米国FTC法およびプライバシー関連法に触れた上で、本事例を紹介し、実務上の示唆について検討する。

 

2 米国FTC法およびプライバシー関連法

 FTC法は、米国の消費者を保護する観点から、第5条(a)で、企業による「不公正な競争方法」(unfair methods of competition)および「不公正若しくは欺瞞的な行為又は慣行」(unfair or deceptive acts or practices)を禁止している[6]。そして、FTCは、同条(b)ないし(n)の具体的な権限や手続に基づいて民間企業が禁止行為を行わないように監督している。FTC法は、原則として民間企業すべてを監督対象とし、米国内のみならず域外への適用も規定している[7]

 他方で、個人情報保護については、米国では現時点で連邦レベルの包括的な規制法が存在せず、個別の分野ごとに個人情報保護を定める「セクトラル方式」(個別分野別方式)を採っている。個別法のうち、COPPAは、13歳未満の児童の個人情報を保護しており、連邦レベルでは監督機関が存在しないため、FTCがCOPPAの執行を行っている[8]

 なお、州レベルではカリフォルニア州を始め、包括的な個人情報保護法制の導入が増加している。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(いとう・ゆうた)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院卒業。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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