SH4278 公取委、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査結果及び独禁法43条に基づく事業者名の公表 藤並知憲(2023/01/20)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する
緊急調査結果及び独禁法43条に基づく事業者名の公表

岩田合同法律事務所

弁護士 藤 並 知 憲

 

1 はじめに

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、令和4年12月27日、労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコスト上昇分を取引価格に反映せず、従来どおり取引価格を据え置くことにより、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当する行為が疑われる事案に関する実態調査を行ったとして、その調査結果を公表した(以下、同調査を「本緊急調査」という。)。

 以下では、同調査の内容及び結果を概観するとともに、実務上の留意点について解説する。

 

2 本緊急調査の背景

 公取委は、最低賃金の引上げや、エネルギーコスト及び原材料価格の上昇に伴い、増加した費用等が適切に取引価格に転嫁されることを確保するため、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」[1]の策定、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正及び公取委のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ&A[2](以下「独禁法Q&A」という。)において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがあり、下記の①及び②の2つの行為がこれに該当することを明確化する等の取組みを行ってきた。

この記事はプレミアム会員向けの有料記事です
ログインしてご覧ください


(ふじなみ・とものり)

岩田合同法律事務所弁護士。2014年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2015年弁護士登録。ジェネラル・コーポレートを中心に企業法務に従事するほか、商事関係訴訟、商事非訟、民事調停、保全・執行事件等を含めた、幅広い紛争対応業務を取り扱っている。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

タイトルとURLをコピーしました