SH4281 VTuberに関する投稿記事について、「中の人」への人格権侵害が認められた事例(大阪地判令和4・8・31判タ1501号202頁) 後藤未来/二村尚加(2023/01/24)

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VTuberに関する投稿記事について、「中の人」への人格権侵害が
認められた事例(大阪地判令和4・8・31判タ1501号202頁)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 二 村 尚 加

 

1 はじめに

 近年、イラストやCGを元にした2Dあるいは3Dモデルによって表現されたキャラクター・アバターの姿を通して動画配信等の活動を行う、いわゆるVTuber(バーチャルYouTuber)が人気を博している。他方で、SNS上などにおいて、VTuberとして活動する人の肖像権、名誉権、プライバシー権等の人格権を侵害するような事案も発生している。

 大阪地判令和4・8・31判タ1501号202頁は、まさにそのような人格権侵害が問題となった事件(「本事件」)であり、裁判所は、VTuberに対するインターネット電子掲示板(「5ちゃんねる」)での投稿が、いわゆる「中の人」(VTuberとして活動する人物)の人格的利益を侵害するものと認め、当該投稿にかかる発信者情報の開示を命じた[1]。本稿では、本事件と判決の概要について、関連する議論と併せて紹介する。

 

2 本事件の概要

 本事件の原告は、その氏名(本名)や容姿を明かすことなく、「宝鐘マリン」の名称と架空のキャラクターのアバターを用いてYouTubeに動画を投稿したり、Twitter上でツイートする等の活動を行っていた。

 インターネット上の電子掲示板「5ちゃんねる」において、原告に関して、以下のような投稿がなされた。

 

【原告に関してなされた投稿内容】

スレッド名【バーチャルYouTuber】宝鐘マリン#95【A
レス番号 投稿内容
113(本件投稿)   「仕方ねぇよバカ女なんだから
 母親がいないせいで精神が未熟なんだろ」

 これに対し原告は、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律4条1項(令和3年法律第27号による改正前のもの)に基づき、本件投稿の発信者情報の開示を求めて大阪地裁に提訴した。なお、被告は、本件投稿に用いられたIPアドレスを管理していた者である。

 主に争点となったのは、以下の2点である。

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(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(にむら・なおか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年中央大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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