SH4304 中国:女性権益保障法の改正と雇用者の注意点(1) 川合正倫/張玥(2023/02/06)

労働法

中国:女性権益保障法の改正と雇用者の注意点(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士  川 合 正 倫

張     玥

 

 2022年10月30日、中国全国人大常委会第37回会議において、改正「中華人民共和国女性権益保障法」(以下「改正法」)が可決され、2023年1月1日から施行された。

 改正法は、女性従業員の保護を深め、法律条文数も9章61条から10章87条に増加された。同法は、企業に対して主にセクハラの防止、就業の平等、女性労働健康保護の面から新たな要求を課している。以下、雇用者たる企業に関連する改正内容を中心に紹介する。

 

1 セクハラの防止

 ⑴ 企業の義務

 改正法以前も、法律及び行政法規においてセクハラに関する規定は存在した。具体例をあげると、改正前の女性権益保障法40条は「女性にセクハラを行ってはならず、被害女性は所属する単位と関連機構に告発することができる。」とされており、2014年施行の「女性従業員労働保護特別規定」11条は、「労働場所において、雇用者は女性従業員に対するセクハラを予防、阻止しなければならない」と定めていた。加えて、2021年施行の民法典1010条においても「他人の意思に反し、言語、文字、画像、身体言語等の方法でセクハラを行った場合、被害者は行為者に対して民事責任を負担するように求めることができる。企業は、合理的な予防、苦情受理、調査処理等の措置をとり、職権、従属関係等を利用しセクハラを防止、阻止する義務を負う」と定めている。もっとも、これらの規定は原則的な規定に留まり、企業がとるべき具体的な措置を定めるものではなかった。

 改正法は、セクハラの定義を明確化し、被害女性の救済措置、企業によるセクハラ防止保護制度についても明確に定めている。具体的には、改正法23条は、「女性の意思に反し、言語、文字、画像、身体言語等の方法によりセクハラをしてはならない。」としており、民法典1010条の規定と一致する内容となっている。また、同条において、被害女性は、関係する単位及び国家機関に対し苦情を申し立てることができることに加え、公安機関に対する通報、人民法院において行為者に民事責任を請求することもできるとの救済措置が定められている。

 さらに、改正法25条によれば、雇用者は以下の措置をとり、女性に対するセクハラを予防、阻止しなければならない:

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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

 

(Yue・Zhang)

日本長島・大野・常松律師事務所上海オフィス顧問。2016年上海交通大学法学部卒業、2020年慶応義塾大学法学研究科卒業。現在長島・大野・常松法律事務所上海オフィスの顧問として一般企業法務、M&A及び企業再編を中心に幅広い分野を取り扱っている。(※中国法により中国弁護士としての登録・執務は認められていません。)

 

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