SH4331 「GX実現に向けた基本方針」にかかる閣議決定(2023年2月10日) 宮川賢司/藏野舞(2023/02/28)

組織法務サステナビリティ

「GX実現に向けた基本方針」にかかる閣議決定(2023年2月10日)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 宮 川 賢 司

  弁護士 藏 野   舞

 

1 はじめに

 日本政府は、パリ協定に基づき2030年度には温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量を2013年度から46%削減[1]し、2050年度にはカーボンニュートラルを実現するという目標(Nationally Determined Contribution、以下「NDC」という。)を宣言している[2]。この点、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻が発生したことにより、日本においても電力供給逼迫やエネルギー価格の高騰といった事態が生じており、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation, GX)[3]の必要性に懐疑的な見方もある。しかし、GXを加速させてたとえばわが国における再生可能エネルギー由来のエネルギー供給量を増加させることでエネルギー安全保障を確保することとなる。また、わが国が得意とする省エネ技術その他の脱炭素技術を活用することで、わが国の脱炭素を加速するのみならず、他国(特に発展途上国)の脱炭素を後押しすることにもなるので、GXは日本経済の産業競争力強化・経済成長にもつながる可能性がある。このような背景を踏まえ、2023年2月10日、「GX実現に向けた基本方針」(以下「基本方針」という。)が閣議決定された。また同日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」が閣議決定され、第211回通常国会に提出された[4]

 

2 基本方針の主要ポイント

 基本方針は、以下に説明するようにわが国の様々なセクターに影響する政策を束ねたものであり、すべてはNDC達成に貢献するものである。それらの政策は、大別すると、(1)わが国におけるエネルギー供給の構造転換を図るものと、(2)カーボンプライシング[5]等を活用してGXへの投融資を促進するものに分けられるので、以下それぞれ概観する。

 

 エネルギー供給の構造転換に関するもの

 この観点から、たとえば下記のような施策が提案されている。

 省エネルギーの徹底・推進

  • 再生可能エネルギーの拡大・原子力発電の活用
  • 水素・アンモニアの利用拡大
  • CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、SAF(Sustainable Aviation Fuel)等の脱炭素技術の活用

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(みやがわ・けんじ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LLM)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。

(くらの・まい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年国際基督教大学教養学部卒業。2021年一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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