SH4362 シンガポール:東南アジアにおけるBNPLの規制動向 松本岳人(2023/03/16)

資金決済法・デジタル資産

シンガポール:東南アジアにおけるBNPLの規制動向

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 松 本 岳 人

 

1 BNPLとは

 Buy Now Pay Later(以下「BNPL」という。)とは、その英文の示すとおり、今買って、代金は後払いという、決済方法の一つであり、近年世界的にサービスの提供者や利用者が拡大している。BNPLの仕組みは、サービスの提供者ごとに違いはあるものの、基本的には、BNPLサービスを提供する事業者が消費者に代わって加盟店に対して購入代金を立て替え払いし、消費者から回収する仕組みであるが、特徴的なのは消費者側の後払いの分割手数料が無料(又は非常に低額)であるところであり、加盟店である販売店側が決済手数料をBNPL事業者に支払うというモデルであることが多い。

 もともとは欧米のスタートアップ企業などが普及させてきたビジネスモデルであり、日本でも一定の利用が見られるところであるが、東南アジアでも市場拡大が見られている。新型コロナウイルス禍でのネットショッピングの拡大や、東南アジア諸国では銀行口座やクレジットカードの保有率が低いといった背景もあり、東南アジアのスーパーアプリ企業やEC企業なども参入しており、今後、若年層などを中心に決済手段としてBNPLのますますの普及が見込まれている。

 

2 世界各国での規制状況

 BNPLは消費者にとって決済の多様性という利益を与える一方で、消費者の1回あたりの支払い額が少額であることから、消費者が無意識にBNPLを利用しすぎて過剰債務を抱えてしまうといった課題も指摘されている。消費者保護の観点等から貸付などの一定の与信行為については規制がなされている国が多いものの、BNPLサービスの特徴として消費者に分割手数料や利息に相当する負担がない場合、利息の上限規制などの既存の規制枠組みにおいて規制の対象外とされる場合も多い。例えば、日本では割賦販売法において2か月を超える分割払いを業として行う場合、包括信用購入あっせんや個別信用購入あっせんとしての規制が及ぶこともあるが、当該規制に該当しない範囲でBNPLサービスが提供されることもある。また、英国では従来無利息の12か月以内の貸付について規制の対象外とされていたなど短期の貸付けに規制を設けていない国もある。

この記事はプレミアム会員向けの有料記事です
ログインしてご覧ください


 

(まつもと・たけひと)

2005年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2007年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2008年に長島・大野・常松法律事務所に入所後、官庁及び民間企業への出向並びに米国留学を経て、2017年から2020年まで長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。現在は、日本及び東南アジア地域での不動産・インフラ関係の案件を中心に企業法務全般についてアドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ及び上海に拠点を構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

タイトルとURLをコピーしました