◇SH0068◇東京リスマチック、単独株式移転による純粋持株会社体制への移行 大櫛健一(2014/08/27)

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東京リスマチック、単独株式移転による純粋持株会社体制への移行

岩田合同法律事務所

弁護士 大 櫛 健 一

 

 JASDAQ上場会社である東京リスマチック株式会社(以下「東京リスマチック」という。)は、同社単独による株式移転(以下「本株式移転」という。)により、純粋持株会社(完全親会社)である株式会社日本創発グループ(以下「日本創発」という。)を新設するとともに[1]、東京リスマチックの定時株主総会基準日制度を廃止するための定款変更(以下「本基準日定款変更」という。)を行うこと[2]を公表した。

 株式移転とは、既存の株式会社を完全子会社とする完全親子会社関係を創設することを目的とする会社の行為であり、具体的には、完全親会社となる株式会社(本件での日本創発がこれにあたり、以下「株式移転設立完全親会社」という。)を新設し、当該株式移転設立完全親会社に対し既存の株式会社(本件での東京リスマチックがこれにあたり、以下「株式移転完全子会社」という。)の株主が有する全株式を移転させるものである(下図参照)。

 

 

 株式移転を行うためには、株式移転完全子会社において、株式移転計画等の作成及び備置・閲覧(会社法772条、803条等)、株主総会における承認決議(特別決議。同法804条)、債権者保護手続(同法810条)等の所定の手続きを経る必要がある。そして、株式移転の効果として、株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済み株式の全部を取得し(同法774条1項)、株式移転完全子会社の株主は、同じ日に、株式移転計画の定めに従って、株式移転設立完全親会社の株主となる(同条2項)。

 そのため、かかる本株式移転の結果、株式移転完全子会社である東京リスマチックの株主は、株式移転設立完全親会社である日本創発の1名のみになる。

 本株式移転と併せて公表された本基準日定款変更は、かかる本株式移転の結果を受けたものである。

 すなわち、東京リスマチックの定款12条は、毎年12月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とすることを定めており、これは「定時株主総会において株主としての権利を有する者」をあらかじめ確定しておくことを目的とした規定である。

 もっとも、本株式移転により、東京リスマチックの株主が日本創発1名のみになった場合には、日本創発が保有する東京リスマチックの株式を譲渡するか、東京リスマチックが第三者に対して新株を割り当てるなどしない限り、「定時株主総会において株主としての権利を有する者」は、常に日本創発1名のみに確定することになるため、基準日によって株主としての権利を有する者を確定する必要がなくなることになる。

 そこで、株主総会において本株式移転の議案が承認されることや、その後、本株式移転の効力が失われていないこと等を条件として、上記定款12条の削除を内容とする本基準日定款変更の効力が生じるものとされている。

 株式移転制度は、既存の株式会社を子会社とする持株会社の創設を目的とするところ、東京リスマチックは、本株式移転による持株会社制への移行の狙いとして、グループ全体の企業価値向上のための経営体制の構築や、効果的な経営資源の調達及び配分を行うことでグループの経営効率を向上させること等を挙げている。

 また、公表されているプレスリリースによれば、本株式移転は、東京リスマチックによるグループ全体の組織再編において「ステップ1」と位置付けられており、「ステップ2」として、東京リスマチックの子会社等(14社)についても、日本創発の子会社として再編する予定とのことである。

以上

 

(おおくし・けんいち)

岩田合同法律事務所弁護士。2004年上智大学法学部卒業。2006年弁護士登録。主に、流動化・証券化取引、各種金融機関規制法(銀行法、金融商品取引法等)の検討等のファイナンス案件を専門とする。店頭デリバティブ取引やノックイン型投資信託をはじめとした金融商品の販売に関する訴訟等の紛争解決案件も数多く手がける。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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