SH4380 中国:ハーグ条約(認証不要条約)への中国の加入 川合正倫/王雨薇(2023/03/27)

企業紛争・民事手続

中国:ハーグ条約(認証不要条約)への中国の加入

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

中国律師 王   雨 薇

 

 2023年3月8日、駐オランダ中国大使がハーグ条約(1961年10月5日署名の外国公文書の認証を不要とする条約。略称:認証不要条約)への加入申請書を提出した。これによって、中国はハーグ条約に加入することになり、2023年11月上旬の発効を目指している。中国がハーグ条約に加入することにより、日本を含む認証不要条約の締約国で発行される公文書に関し、これまでの時間や労力のかかる領事認証が不要となり、日本の外務省によるアポスティーユ(Apostille)の取得で足りることとなる。

 

1 領事認証とアポスティーユ

 外国において、個人または企業が各種民事、商事手続(例:婚姻・離婚・出生、会社設立、不動産購入、訴訟提起等)を行う際には、日本の官公署、自治体等が発行する公文書(例:登記事項証明書、戸籍謄本、住民票、婚姻要件具備証明書、無犯罪証明書、納税証明書等)を提出する必要が生じる。この場合、提出先国がハーグ条約の締約国でない場合、日本の外務省による公印確認を取得したうえ、提出先国の領事認証を経る必要がある。他方、提出先国がハーグ条約の締約国である場合には、公印確認および領事認証に代わって、日本の外務省によるアポスティーユを取得すればよい。

 領事認証とは、日本に所在する提出先国の大使館・領事館の領事による認証を指す。当該認証を取得するためには、事前に日本の公文書に押印されている公印について外務省の証明(公印確認)を取得する必要がある。

 アポスティーユとは、ハーグ条約に基づく付箋(アポスティーユ)による外務省の証明を指す。公印確認と同様に外務省の証明であるものの、提出先国がハーグ条約の締約国である限り、アポスティーユを取得すれば、日本に所在する提出先国の大使館・領事館の領事認証があるものと同等とみなされ、領事認証は原則として不要になる[1]

 もっとも、ハーグ条約の適用範囲は、締約国にて作成された公文書(司法当局が発行する文書、行政官庁の文書、公証証書、登記済みまたは登録済みの証明、確定日付証明、署名証明)のみであり、私文書(契約書、委託書、委任状、宣言書等)[2]本体にアポスティーユを取得することはできない。私文書にアポスティーユを取得するためには、日本の公証役場において公証人による認証を取得しなければならない。

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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

 

(Yuwei・Wang)

長島・大野・常松法律事務所 外国法弁護士。2012年中国政法大学法学部卒業、2015年早稲田大学法学研究科修了(法学修士)。M&A、コーポレートガバナンス、組織再編、債権回収、倒産、労働法、紛争解決を中心に様々な中国の法律問題を幅広く取り扱っている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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