◇SH0455◇シンガホール:シンガポールの倒産法制 長谷川良和(2015/10/27)

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シンガホール:シンガポールの倒産法制

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 長谷川 良 和

 取引先の破綻時や倒産手続にある会社の事業買収を検討する場合等、事業会社においても倒産法制の理解が必要となる局面は実務上、間々生じる。人・モノ・金・情報が飛び交うハブとして機能するシンガポールもその例外ではない。そこで、本稿は、シンガポールの会社に関する倒産手続の種類と各手続の概観を紹介することとしたい。

1.   倒産手続の種類

 シンガポールの会社に対する倒産手続は、再建型の、①更生管財手続、②スキーム・オブ・アレンジメント、③保全管理と、清算型の、④裁判所による強制清算に大別される。なお、個人の破産については破産法が適用されるが、会社の倒産手続についてはシンガポール会社法の倒産に関する規定が適用される。

2.   各手続の概観

(1)  更生管財手続

 更生管財手続は、更生の目的達成に必要な会社経営に関する権限を裁判所任命の更生管財人に付与し、会社の更生を図る手続であり、日本の会社更生手続に類似する。

 更生管財手続の申立ては、会社、取締役会又は債権者によりなされ、裁判所が更生管財命令を発するためには、原則として、会社がその債務の支払いをできず、又はできなくなる見込みであること、及び更生管財命令が(a)会社の存続、(b)会社及び債権者又は株主の間の更生計画案の承認、(c)清算手続の場合に比べ、会社財産をより有利に換価可能といういずれかの目的を達成できる現実的な見込みがあることが必要である。

(2)  スキーム・オブ・アレンジメント

 スキーム・オブ・アレンジメントとは、シンガポール会社法に基づき、裁判所の許可を得て行われる会社と株主又は債権者との利益調整を図る手続をいい、会社倒産の局面では支払不能状態にある会社が債権者から支払猶予や債務免除を受け、会社を再建するために利用されることがある。更生管財手続外におけるスキーム・オブ・アレンジメントは、更生管財人が介在しない、いわゆるDIP型の手続である。

 スキーム・オブ・アレンジメント案の検討を円滑にするために、債務者会社に対する手続禁止の申立てを裁判所に対し行うことも多い。

(3)  保全管理

 保全管理は、担保権実行の一つの手段であり、担保権設定契約に保全管理人を選任できる旨を規定する場合に、担保権者が裁判所に申立てることにより手続が開始する。保全管理人は、担保資産の管理や債権回収の責務を負い、また会社の事業を遂行する権限まで付与される場合もある。

(4)  裁判所による強制清算

 会社が支払不能状態にある場合、裁判所による強制清算命令により、会社財産の処分及び清算が行われる。裁判所による強制清算は裁判所に対する申立てにより開始され、申立権者には、会社のほか、債権者が含まれる。

 申立て後、審理手続を経て裁判所が適切と判断した場合、裁判所は清算命令を発し、清算人を選任する。清算命令が出された後は、会社に対する一切の法的手続が禁止又は中断される。また、清算人の選任後は、会社財産の管理処分権は清算人に専属する。

 

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