SH4384 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第21回 公益通報者の保護(3) 金山貴昭(2023/03/30)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 

第21回 公益通報者の保護(3)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 派遣社員・請負会社の従業員等からの通報への対応

 当社(A社)は、X社(派遣会社)から派遣社員を受け入れており、Y社に対して建物の建築工事を委託(請負契約)しています。当社に対して以下の通報が行われた場合、公益通報者保護法では、当社、X社(派遣会社)、Y社(請負会社)に対して、通報者への対応や会社間の契約関係についてどのようなルールが規定されていますか。

  1. ① 当社の従業員から当社に対して当社の違法行為について通報があった場合
  2. ② 派遣社員から当社に対して当社の違法行為について通報があった場合
  3. ③ 請負会社(Y社)の従業員から当社に対して当社の違法行為について通報があった場合

 

A 【ポイント】

①の場合には、A社は、公益通報したことを理由とする通報者の解雇や通報者に対する損害賠償請求はできず、その他の不利益な取扱いは禁止されます。

②の場合には、A社は、公益通報したことを理由とする通報者に対する損害賠償請求はできず、その他の不利益取扱いは禁止されます。また、A社は、公益通報したことを理由する派遣会社(X社)との派遣契約の解除も無効です。他方、派遣会社(X社)も、公益通報したことを理由として通報者の解雇、損害賠償請求はできず、その他の不利益な取扱いも禁止されます。

③の場合には、A社は、公益通報したことを理由とする通報者に対する損害賠償請求はできません。他方、請負会社(Y社)も、公益通報したことを理由として通報者の解雇、損害賠償請求はできず、その他の不利益な取扱いも禁止されます。

 

【解説】

 公益通報者保護法上の保護の内容は、通報先と通報者との関係性により異なります。本設例では、①事業者(当社)の従業員が通報する場合、②事業者(当社)で働く派遣労働者が通報する場合、③事業者(当社)の取引先の労働者が通報する場合、の3つが問題となります。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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