◇SH1786◇債権法改正後の民法の未来24 役務提供契約(4・完) 橋田 浩/宇仁美咲(2018/03/23)

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債権法改正後の民法の未来 24
役務提供契約(4・完)

橋田法律事務所/  岡本正治法律事務所

弁護士 橋 田   浩/弁護士 宇 仁 美 咲

 

4 コメント

(1) 大弁での議論

(ア)役務提供型契約の受皿規定

 新たな役務提供型契約に対応する規律が民法典には存在せず、既存の典型契約がこれに対応できていないことについては、問題提起のとおりであるものの、役務提供型契約の形態は極めて多様であり、これらすべてに対応する規律を定立できるかどうかは疑問であるとの認識を示していました。

 そのため、役務提供型契約に適用される総則的な規定を設けることには反対するとともに、既存の典型契約の規定の適用範囲の見直しについても反対をしていました。

 また、役務提供型契約の受皿規定の適用範囲を既存の典型契約に該当しないもののうちの一定の範囲のものに絞るのであれば、どういった類型の役務提供型契約を対象とするのか、その対象選択の適否の観点から慎重に検討する必要があるとしました。

(イ)役務提供者の義務に関する規律

 役務提供型契約の受皿規程を新たに設けることには反対するものの、仮にこれを設けるとした場合には、役務提供者が負う義務の内容について明文で定めること、無償の役務提供契約であっても役務提供者が事業者である場合には注意義務を軽減しないこと、報酬の支払方式について成果完成型と履行割合型の2類型を設けること、役務提供の全部または一部の履行が不可能になった場合に例外的に役務提供者が報酬請求し得る余地を認めること、任意解除権を認めること等については基本的に賛成しています。

 ただし、役務受領者の協力義務は契約内容や契約の趣旨から導き出せば足りるのでこれを明文で規定する必要はないとの意見を述べています。

(ウ)媒介契約

 媒介契約の明文規定を置くことについては一貫して賛成し、その定義の中に「有償の準委任」であることを盛り込むこと、媒介者には委託の目的に適合するような情報収集義務があること、媒介により第三者との間に法律行為が成立したことにより報酬請求権が発生するとすることについてもいずれも賛成しています。

(2) 残された課題

 役務提供型契約の規定を設けることや媒介契約の規定を設けることが提案された背景は、いずれも、現行民法においては、準委任が広く役務提供型契約の受皿規定を担っているにもかかわらず、準委任に準用される委任の規定の中には、役務提供型契約一般に適用することが適切でないものがあることにありました。

 改正民法においては、報酬の支払方式についての規定や任意解除権についての規定を設けたことにより、準委任が役務提供型契約の受皿規定としての役割を担うことは、現行民法よりは不適切な場面が減少したとは言えます。

 しかし、準委任が役務提供型契約一般の受皿規定としての役割を担っていることが現実の取引に合致しない場面があること、民事仲立についての一般的な規定が民法にないことの不都合については、提案が出された当初から概ね共通認識が持たれていたことに鑑みると、改正民法のもとにおいて、準委任の担うべき役割を慎重に見極めながら、さらに国民に分かりやすい民法を志向する努力を怠ってはならないのではないかと思われます。

以 上

 

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