◇SH1794◇国税庁・中企庁、平成30年度税制改正による事業承継税制等の解説パンフレットを公表(2018/04/24)

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国税庁・中企庁、平成30年度税制改正による事業承継税制等の解説パンフレットを公表

――非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除等――

 

 国税庁は4月11日、平成30年度税制改正に関する解説パンフレットとして、「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」、「相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました(平成30年4月1日以後に提出する申告書から適用)」を公表した。

 「事業承継税制」については、中小企業庁も4月2日に、「平成30年4月1日から事業承継税制が大きく変わります」を公表している。

 平成30年度税制改正のうち「事業承継税制」については、従来の措置の改正に加えて、10年間の特例措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」等が創設された。

 また、「相続税の申告書の添付書類」については、相続税法施行規則の改正により、法務省が行っている「法定相続情報証明制度」にて取得が可能な「法定相続情報一覧図」についても、一定の条件をもとに添付書類として認められることとなった。

 以下、今回の改正の概要について、パンフレットから紹介する。

 

○ 中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充(事業承継税制)(中企庁のパンフレットより)

(1) 対象株式数上限等の撤廃

《現行制度》
 先代経営者から贈与/相続により取得した非上場株式等のうち、議決権株式総数の2/3に達する部分までの株式等が対象(贈与/相続前から後継者が既に保有していた部分は対象外)。例えば、相続税の場合、猶予割合は80%であるため、猶予されるのは2/3×80%=約53%のみ。

《改正後》
 対象株式数の上限を撤廃(2/3→3/3)、猶予割合を100%に拡大することで、事業承継時の贈与税・相続税の現金負担をゼロにする。

(2) 雇用要件の抜本的見直し

《現行制度》
 事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められている。仮に雇用8割を維持出来なかった場合には、猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要がある。

《改正後》
 制度利用を躊躇する要因となっている雇用要件を実質的に撤廃することにより、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続可能に。(※雇用維持が出来なかった理由が経営悪化又は正当なものと認められない場合、認定支援機関の指導・助言を受ける必要がある。)

(3) 対象者の拡充

《現行制度》
 1人の先代経営者から1人の後継者へ贈与・相続される場合のみが対象。

《改正後》
 親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。

(4) 経営環境変化に応じた減免

《現行制度》
 後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税を納税するため、過大な税負担が生じうる。

《改正後》
 売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安を軽減。

(5) 相続時精算課税制度の適用範囲の拡大

《現行制度》
 相続時精算課税制度は、原則として直系卑属への贈与のみが対象。

《改正後》
 事業承継税制の適用を受ける場合には、相続時精算課税制度の適用範囲を拡大することにより、猶予取消し時に過大な税負担が生じないようにする。

 

○ 相続税の申告書の添付書類の範囲の拡大について(国税庁のパンフレットより)

1 改正の概要

 これまで、相続税の申告書には①の書類を添付しなければならないこととされていましたが、平成30年4月1日以後は、①の書類に代えて、②又は③のいずれかの書類を添付することができるようになりました(引き続き、①の書類も添付できます。)。

  1. ①「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの
  2. ② 図形式の「法定相続情報一覧図の写し」(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります。)(注:被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものも含みます。)の添付も必要です)
  3. ③ ①又は②をコピー機で複写したもの

 

2 Q&A

《問1》
 法定相続情報一覧図の写しを相続税の申告書の添付書類として利用する場合には、なぜ図形式のものしか認められないのですか。

《答》
 法定相続情報一覧図の写しは、参考2=略=のような図形式のほか、被相続人及び相続人を単に列挙する形式(列挙形式)により作成することができますが、列挙形式では相続人の法定相続分が確認できない場合もあるため、相続税の申告書の添付書類として利用するときには、図形式のものであることが必要となります。

 

《問2》
 上記の「1 改正の概要」に、法定相続情報一覧図の写しについては、「子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります。」とありますが、具体的には子の続柄をどのように記載すればよいですか。

《答》
 戸籍上の続柄(長男、長女、養子など)によって記載する方法(参考2=略=参照)があります(子の続柄が単に「子」と記載されたものは、実子又は養子のいずれであるかが分かりませんので、相続税の申告書の添付書類として利用できません。)。

 

 

  1. 国税庁、「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」(4月11日)
    http://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201804/pdf/01.pdf
  2. 国税庁、「相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました(平成30年4月1日以後に提出する申告書から適用)」(4月11日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/04/h30kaisei.pdf
  3. 中企庁、「平成30年4月1日から事業承継税制が大きく変わります」(4月2日)
    http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2018/180402shoukeizeisei.htm
  4.  
  5. ○ 日税連、「国税庁、平成30年度税制改正による事業承継税制等の改正等について」(4月12日)
    http://www.nichizeiren.or.jp/whats-new/p180412/
  6. ○ 財務省、「所得税法等の一部を改正する法律案」(3月28日成立、3月31日公布、4月1日施行)(第196回国会における財務省関連法律一覧)
    https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/196diet/index.htm

 

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