◇SH1876◇経産省、「統合報告・ESG対話フォーラム」の「報告資料」を公表(2018/05/31)

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経産省、「統合報告・ESG対話フォーラム」の「報告資料」を公表

--開示・対話の促進に関する【4つの視点】と【4つのアクション】--

 

 経済産業省は5月18日、「統合報告・ESG対話フォーラム」の「報告資料」を公表した。

 経産省では、ガバナンス改革を「形式」の段階から「実質」の段階、「実践」の段階へと進展させていくことが、環境変化への対応とともに求められているとの問題意識から、企業と投資家等が対話するための共通言語となる「価値協創ガイダンス(2017年5月)」、ESGと無形資産投資に関する体系的な課題認識と政策提言を示す「伊藤レポート2.0(2017年10月)」を公表した。その後、昨年12月に本フォーラムを立ち上げ、企業と投資家の開示・対話事例の検討を行ってきた。そこで、これまでの本フォーラムの議論を整理し、議論内容、参加者・有識者からのメッセージ、それらに基づく今後のアクションを記した「報告資料」をとりまとめ、公表したものである。

 「報告資料」の概要は、以下のとおりである。

 

「統合報告・ESG対話フォーラム報告資料」の概要

 本フォーラムでは、参加企業から、自社の情報開示や投資家との対話の「実践」の状況や悩み等が示され、価値協創ガイダンスの活用方法、投資家への疑問や期待が報告された。投資家やアナリストからは、これらの取組みに対する具体的な評価が示されるとともに、自らの「実践」、すなわち企業評価や対話(スチュワードシップ活動等)の方針、ESG等の非財務情報の利用方法が示され、価値協創ガイダンスとの関係性や活用方法等が報告された。

 こうした参加者からの「実践」を材料としたワークショップ型の対話が行われ、また、個別テーマを議論する分科会でも突っ込んだ議論が行われ、企業と投資家の情報開示や対話の質を高めていくための方策についても検討された。

 今般、本フォーラムでの議論やそこから得られた示唆を整理し、下記のように「開示と対話の促進のために必要な4つの視点」としてとりまとめられた。

 

【開示と対話の促進のために必要な4つの視点】

  1. ①「目的を持った対話」を理解する
     企業と投資家がともに、開示・対話を単なるコストではなく、企業価値向上に向けた投資として捉え、「目的」を明確にして取り組むこと
     
  2. ② 共通言語を活用する
     企業や投資家の多様性・独自性を尊重しつつも、「価値協創ガイダンス」等の共通言語を使うことで、より効果的・効率的な情報開示や対話を行うこと
     
  3. ③ 社内でも対話する
     「価値協創ガイダンス」を活用した開示や対話を契機として、経営者のみならず社外取締役や実務担当者も含む社内の対話を深め、自社の価値創造プロセスを理解すること
     
  4. ④ 投資家が企業評価手法を示す
     ESG等の非財務情報や対話がどう投資判断に反映されるかが見えないことで企業が開示・対話に消極的にならないよう、「価値協創ガイダンス」等を使って投資家が自らの評価手法を示すこと

 経産省では上記【4つの視点】の実現を後押しするため、以下【4つのアクション】 を実行し、展開していくこととしている。

 

(1) 積極的に開示を行う企業の支援(「価値協創ガイダンスロゴマーク」使用開始)

 価値協創ガイダンスを参照して開示を行う国内上場企業の統合報告等における差別化をサポートするため、主に企業が使用可能なロゴマークを策定した。ロゴマークの使用により、そうした情報開示に着目した対話が活性化することを期待している。

 

(2) 機関投資家による宣言等を通じた企業と投資家の相互理解促進(「アクティブ・ファンドマネージャー宣言」の発出)

 本フォーラムの分科会である「アクティブ・ファンドマネージャー分科会」において、アクティブファンドに責任を持つファンドマネージャー等が価値協創ガイダンスを読み込み、運用現場の中で活かすための方策を検討・議論した結果、ファンドマネージャーとして、企業が本ガイダンスに基づく開示を行った場合にその内容を参照し、精読・咀嚼した上で対話に臨むなどの宣言がとりまとめられた。これは、積極的に開示を行おうとする企業を後押しし、対話の質を高めていくことを意図したものであり、同分科会では、本宣言の背景となった分科会での議論をまとめた文書を公表することを予定している。

  1. ○ アクティブ・ファンドマネージャー宣言(抜粋)
  2. 1 私たちアクティブ・ファンドマネージャーは、投資リターンの最大化のため、特に企業の個性を重視し他の企業との差異に注目して株式運用を行います。
  3. 2 企業との建設的な対話を重視する私たちのようなアクティブ・ファンドマネージャーにとって、「価値協創ガイダンス」は有用なツールたり得ます。
  4. 3 企業が能動的に明瞭な形で「価値協創ガイダンス」を踏まえた情報開示を実施するならば、対話を重視する私たちのようなアクティブ・ファンドマネージャーはそうした情報開示の内容を参照し、精読・咀嚼した上で対話に臨みます。
  5. 4 対話することの自己目的化や対話の形骸化は避ける必要があり、私たちアクティブ・ファンドマネージャーはその責任の一端を担う必要があります。

 

(3) 各産業・分野への価値協創ガイダンスの浸透拡大(各種ガイドライン等間の連携促進)

 経産省では、バイオメディカル産業版「価値協創ガイダンス」の策定、産業保安・製品安全分野での統合報告書等の情報開示の評価(価値協創ガイダンスを参考に審査基準を設定)の実施など、各産業での本ガイダンスの活用を進めることとしている。

 また、価値協創ガイダンスと「CGSガイドライン(2017年3月制定)」や「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン(2017年3月制定)」等分野別のガイドラインとの関係性を明示しつつ、それらの今後の改訂を整合的・補完的に行うことで、ユーザーが効果的・統合的にそれぞれの文書を活用できように取り組んでいく。

 

(4) 中小型株における開示・対話のあり方の検討・情報発信(「関西分科会」の活動)

 本フォーラムの分科会である「関西分科会」において、IR担当者が数名である企業の開示・対話に携わる実務家が集まり、リソースが必ずしも潤沢ではない企業にとっての価値協創ガイダンスの活用方法の検討や取組事例の共有を行う。これにより本ガイダンス利用企業の裾野を拡大し、我が国上場企業全体の底上げを図ることとしている。

 さらに、「報告資料」では、経済団体や資本市場に関係する機関・団体(日本証券アナリスト協会、日本IR協議会、Japan Innovation Network、経済同友会、日本公認会計士協会、証券リサーチセンター、東京証券取引所、WICI等)における活動が連携して行われることを企図して、今後のアクションの方向性を示しており、経産省としても、これらの団体と連携して活動していくこととしている。

 

  1. 経産省、開示・対話に関する“4つの視点”と“4つのアクション”をとりまとめました --企業の「稼ぐ力」向上のため、統合報告、ESG開示・投資を促進します(5月18日)
    http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180518001/20180518001.html
  2. ○「統合報告・ESG対話フォーラム」報告資料
    http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180518001/20180518001-1.pdf
  3. ○「統合報告・ESG対話フォーラム」報告資料(概要版)
    http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180518001/20180518001-2.pdf
  4. ○ 価値協創ガイダンスロゴマークについて
    http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ESGguidance.html
  5. ○ アクティブ・ファンドマネージャー宣言
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/AM_Japanese.pdf
  6. ○ ポータルサイト(企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス」)
    http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ESGguidance.html
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  8. 参考
    SH1580 経産省、「統合報告・ESG対話フォーラム」の第1回会合を開催--「価値協創ガイダンス」を踏まえた企業と投資家の対話の場--(2018/01/12)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5213398
  9.   SH1212 経産省、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」(価値協創ガイダンス)を策定--ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進--(2017/06/06)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=3749516

 

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