◇SH1883◇経済同友会、「社外取締役の機能強化『3つの心構え・5つの行動』」を公表(2018/06/04)

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経済同友会、「社外取締役の機能強化『3つの心構え・5つの行動』」を公表

――社外取締役就任を依頼する企業、引き受ける側のそれぞれに求められるポイント――

 

 経済同友会は5月22日、「社外取締役の機能強化『3つの心構え・5つの行動』-実効性の高いコーポレートガバナンスの実現を目指して-」を公表した。

 経済同友会の経営改革委員会(委員長=小野寺正・KDDI取締役相談役)では、持続的な企業価値向上に必要な成長に向けた日本企業の課題として、下記の3点を重視して検討を行ってきた。

  1.   実効性の高いコーポレートガバナンスの確立
  2.   形式ではなく実質を伴ったコンプライアンス等の徹底
  3.   企業と投資家との対話促進

 同委員会では経済同友会会員企業を対象としたアンケート調査に基づく実態の把握や、ワークショップ、パネルディスカッション等を通じた具体的な課題の共有、議論の積み重ねにより、今般の提言を取りまとめたものである(なお、本提言は上場企業を想定したものである)。

 以下では、同提言から、社外取締役に関する部分の概要を紹介する。

 

「社外取締役の機能強化『3つの心構え・5つの行動』-実効性の高いコーポレートガバナンスの実現を目指して-」の概要(社外取締役に関する部分)

Ⅰ 日本企業の競争力強化における課題

1 社外取締役の機能強化

 本会調査の結果では、社外取締役就任を依頼する企業と社外取締役を引き受ける側は共に、社外取締役に対し「客観性・独立性」を活かした「コーポレートガバナンス・内部統制の監査監督」を期待している。一方、「事業戦略・事業計画の精査・承認」「株主を含むステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させる」の回答割合は、企業に比べて社外取締役を引き受ける側が下回った。

 さらに、社外取締役の活動を支えるための環境整備も不十分であり、本会調査の結果からは、取締役会付議事項の事前説明や取締役会資料の事前配布は、必要最低限の支援であり、社外取締役は取締役会以外の自由闊達な議論の場を求めていることが読み取れる。また、取締役会の監督機能を発揮させるためにも十分な情報提供も必要と考えられる。

 こうした実態から、社外取締役の機能を強化するには、期待される役割を具体的に提示することや、社内取締役と経営執行側との情報の非対称性を縮小する取り組み等が重要であると考える。

 

Ⅱ 提言①社外取締役の機能強化「3つの心構え・5つの行動」

1 社外取締役就任を依頼する企業の「3つの心構え」・「5つの行動」

  1. (1-1) 社外取締役就任を依頼する企業の「3つの心構え」
  2. ① 経営トップが率先して、自社に適したコーポレートガバナンス改革を推進するマインドを醸成する。
  3. ② 社外取締役候補者の選出では、社会的な地位、名声、個人的な関係ではなく、企業価値向上に真に貢献してくれる人材であるかどうかを重視する。取締役会が自社に必要な社外取締役の人物像や資質について、日頃から議論・検討しておくことも重要である。
  4. ③ 社外取締役の知見を活かし、コーポレートガバナンスの強化、取締役会の活性化を図る積極的な姿勢を持ち、不断の努力を行う。

 

  1. (1-2) 社外取締役就任を依頼する企業の「5つの行動」
  2. ① 取締役会と経営執行の役割--取締役会の目指すべき姿や経営執行との役割分担を明確にする
  3.    取締役会と経営執行は、健全な緊張感を持ちつつ、企業理念や戦略を議論・共有し、持続的な企業価値向上の実現に向けて連携することが必要である。経営執行は、事業の着実・効率的な遂行、果敢なリスクテイクを行っていく。取締役会は、経営執行のリスクテイクや意思決定に対するモニタリング機能を担うべく、より広く多様な視点に基づく経営判断を行い、その実効性を自己評価する。取締役会がこうした役割を発揮するためには、十分な人数の独立した社外取締役を置くべきである。
     
  4. ② 社外取締役の選任--企業の成長段階や必要な知見を踏まえて社外取締役を選任する
  5.    社外取締役の選任や任期については、社外取締役を含む指名委員会や任意の指名諮問委員会にて客観性・透明性をもって議論することが望ましい。
  6.    社外取締役には、独立性を確保した上で、豊富な経験と専門的知見を活かしたモニタリングという本質的役割を果たすことを求めていく。独立性の判断基準は、自社の事業形態や取引を踏まえて自ら判断する。そのためには、独自の独立性の判断基準を、対外的な説明責任も踏まえて定めることが重要である。
     
  7. ③ 就任依頼--社外取締役に期待する役割、自社の現状や課題を明確に伝える
  8.    社外取締役候補者へ就任を依頼するに当たっては、期待する役割(経験している事業分野の知見、グローバル経営の経験、顧客視点に立った助言等)や、モニタリング機能を果たすために把握しておくべき自社の現状や課題について明確に伝え、その上で就任を要請する。
     
  9. ④ 取締役会の活性化--取締役会メンバーの多様性を重んじた運営・議事進行による活性化
  10.    取締役会の活性化策として、取締役会議長を非業務執行取締役(社外取締役を含む)が務めることも一案である。社外の視点を活かしたアジェンダ・セッティングや進行により、多様なステークホルダーの意見を尊重した活発な議論が行われやすくなることが考えられる。
     
  11. ⑤ 情報共有・コミュニケーション--長期戦略に対する社外取締役の知見を引き出すコミュニケーション
  12.    取締役会だけでなく、取締役会と経営執行が企業理念や価値観・長期戦略を自由に議論する場や、社外取締役だけで協議する場を設置する。監査役会設置会社においては、社外取締役と監査役との機能補完・連携強化のため、定期的な情報共有・コミュニケーションの場を設置することが望ましい。
  13.    その他、CEOとの個別面談、経営会議への出席、現場訪問、執行側や社員との継続的対話も有効と考えられる。

2 社外取締役を引き受ける側の「3つの心構え」・「5つの行動」

  1. (2-1) 社外取締役を引き受ける側の「3つの心構え」
  2. ① 関連する法令や制度を理解し、また他社のプラクティスを学ぶことを通じて、社外取締役として期待される知見、専門性を活かすべく、継続的に自己研鑽する。
  3. ② 十分な時間と情熱を振り向け、社外取締役としての役割を果たせることを自己保証する。
  4. ③ 執行側との摩擦、衝突を恐れず、企業価値向上の為に真に果たすべき役割を全うし、社外取締役の退任後も数年間はその企業の経営や業績に対し責任を負う覚悟を持つ。
     
  5. (2-2) 社外取締役を引き受ける側の「5つの行動」
  6. ① 役割の把握--取締役会のメンバー構成の中で自身に期待されている役割を把握する
  7.    社外取締役の就任依頼に当たっては、企業理念や価値観に共感できることはもちろんのこと、取締役会が目指す姿、そのメンバー構成の中で自身に期待される役割を会社側から十分聞き取り、役割を果たせるかを自らに問い、コミットする。
     
  8. ② 取締役会での実効性のある発言--外部の視点や自らの知見を活かした実効性のある発言を心がける
  9.    取締役会付議事項の事前説明や事前に配布される取締役会資料の検証に十分な時間を費やし、短期的な業績ではなく、長期的な業績向上に対する責任を意識した本質的な議論が行われるよう、以下のような姿勢を持つ。

    1. ・ 配布資料には記載されていない経営執行の現状に加え、会社および業界独自の慣行や常識がリスクとして潜在していないかを把握するための「質問力」を磨く。
    2. ・ 取締役会の本来的な役割を踏まえ、「思いつきや興味本位」「過去の経験の押し付け」「重箱の隅を突っつく」質問となっていないかを常に自問する。
    3. ・ 総花主義、平均点主義、自前主義による低成長に陥らせないための発言を心がける。
  10. ③ 情報収集・コミュニケーションの努力--企業理念や価値観の理解に努め、情報の非対称性の縮小に取り組む
  11.    企業理念や価値観の理解に努め、情報の非対称性の縮小に取り組む。とりわけ難しい経営判断に関する重要な意思決定を行う際には、取締役会における議論だけでなく、経営会議への出席、現場訪問、執行側や社員との対話、社外取締役だけの本音の議論などを行い、意思決定に必要な情報を多方面から収集する。
     
  12. ④ コンプライアンス、内部統制の機能強化への貢献--会計監査人や内部監査部門とも連携して機能強化に取り組む
  13.    社外取締役は会計監査人や内部監査部門とも連携し、法令やビジネスルールに対し業界および自社の常識や慣行によるずさんな対応が行われていないかを監査監督する。コーポレートガバナンス・内部統制システムの機能強化に取り組み、重大なリスクが顕在化した際の体制の構築や潜在的リスクが発見できる仕組みづくりに対して助言を行う。
     
  14. ⑤ 後継者の選任--指名委員会や指名諮問委員会における後継者の選任や育成計画の策定
  15.    持続的な企業価値向上を実現するための後継者の選任において、社外取締役は指名委員会や任意の指名諮問委員会において、後継者に求められる資質や後継者育成計画の策定にあたり、主体的に役割を担う。

 

  1. 経済同友会、社外取締役の機能強化「3つの心構え・5つの行動」―実効性の高いコーポレートガバナンスの実現を目指して―(5月22日)
    https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2018/180522a.html
  2. ○ 提言
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/06/180522a.pdf

 

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